さらに「まだ発表していない諸々の施策」についてまで言及しておいた。
「状況の認識と矢継ぎ早の対応策の繰り出しという点で、私は豊田社長を優れた経営者だと認める。問題は、豊田社長が繰り出している、そしてまだ発表していないであろう諸々の施策が間に合うか、ということだ。変革するにはトヨタというのはあまりに大きな組織に見えるからだ。豊田社長の挑戦に注目し、応援している。」
今回の2巨頭による発表などという大きな「隠し玉」がこんなにすぐに出てくるとまでは、私にも予想できなかったわけだ。
トヨタ側に大きなメリット、ソフトバンクGとのアライアンス
今回の発表で意外だったのは、この提携が両巨頭のどちらかのトップダウンで始まったのではなく、両社の若手グループの事前協議で詰められて、豊田社長の孫社長訪問に至ったという経緯である。
「イノベーションのジレンマ・セオリー」では、先行巨大企業(この場合にはトヨタ)の内部には伝統的な価値観(バリュー・ネットワーク)がはびこってしまい、変革への大きな抵抗を形成するとされている。しかし、トヨタのなかでは少なくとも豊田社長のブレーン・レベルくらいまでは、この弊害に陥っていなかったらしい。これも豊田社長が近年繰り返して言ってきた「勝つか負けるかではない、生きるか死ぬかだ」というまでの危機感が伝播した成果なのだろう。
今回の提携で大きな利を得るのはトヨタ側だというのが私の見方である。
というのは、この提携でトヨタ側が求めたものは、「ライドシェアのトップグループ」の知見だった、という見方があるのだ(10月5日付BUSINESS INSIDER JAPAN記事『トヨタ×ソフトバンク提携には「必然」しかない』<西田宗千佳>)。
ソフトバンクGはウーバー(北米・欧州)、DiDi(中国)、グラブ(東南アジア)、Ora(インド)といった、ライドシェア大手の筆頭株主になっている。
「『4社で全世界のライドシェアの乗車回数の90%を占めている』と孫社長が語るほど、影響力は大きい。そして何より重要なのは、巨大なシェアを背景に『配車』『運転』に関する情報が集まり続けている、ということだ」(前出BUSINESS INSIDER記事より)