10月4日に発表されたトヨタ自動車とソフトバンクグループ(G)の戦略提携と、新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」の設立発表は多くの人々を驚かせた。
このアライアンスはトヨタのほうから持ちかけたものだという。「自動車産業にとっての100年に一度の危機」ということを豊田章男トヨタ社長は今年に入ってから繰り返しているが、この危機感が大トヨタをしてソフトバンクG、いや孫正義ソフトバンクG会長兼社長ににじり寄らせたと見ることができる。
そして、提携から得られる果実もトヨタ側のほうが大きいと見ることができる。豊田社長は大きな一手を指した。それは大きな可能性を持つ妙手といえる。
両巨頭出席の発表会
発表会では両グループの副社長がプレゼンを行ったが、その後、豊田社長と孫社長自身も登壇し、いってみればトークショーのようなかたちで今回の提携の経緯を語り、和やかな対談を繰り広げた。
日本で時価総額1位のトヨタと3位のソフトバンクG(10月22日現在)という2大会社の突然の提携発表も大きな驚きだったが、両社の2巨頭が壇上で親しくエールを交わしているような光景を予想した向きは少なかっただろう。
トヨタが置かれている状況について、私は本連載前回記事で次のように指摘したばかりだった。
「トヨタが置かれている立場は、絵に描いたような『イノベーションのジレンマ』の事例だと言える。そして、そこでの戦略的なポジションとしては大いなる危機にあると言える。」(『豊田章男トヨタ社長は極めて優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行』より)
そして、豊田社長の状況認識と組織対応を次のように支持した。
「豊田社長は、自社が置かれている危機をよく理解している。それを社内に対してもよく発信しているが、既存組織の対応では間に合わないという構造もよく理解しているようだ。そして、対応策として既存組織(それは子会社群も含む)の再構成を行っているし、外部の経営資源の活用にも手を伸ばしている。」