海外の大株主も買収に懐疑的
海外から反応があった。9月24日付「ブルームバーグ」は、こう報じた。
「英日曜紙サンデー・タイムズは、武田薬品工業の大株主で上位10位以内に入る投資家がシャイアーを買収することに『懐疑的』だと伝えた。(中略)サンデー・タイムズの報道によると、この株主は買収が『寝耳に水』だったと述べ、武田薬品がコスト削減と株主への(利益の)還元を実現できるのか懸念を示した」
武田薬品は買収額のうち4兆円規模を新株の発行で賄い、残り3兆円超は新規に借り入れる方針。財務が悪化するとの判断から、シャイアー買収提案が表面化した今年3月以後、武田薬品の株価の下落が続いた。
10月5日の終値時点での武田の株式時価総額は3.6兆円。中外製薬(3.9兆円)、アステラス製薬(3.9兆円)に次いで業界3位。“薬品業界のガリバー”として君臨していた頃の面影はない。投資家はシャイアーの買収に懸念を抱いているということだ。
投資家が臨時株主総会で、どんな投票行動をとるのかが最大の注目点となる。
大型買収に走らざるを得ない事情
世界のM&A(合併・買収)は大型化、国際化が進んでいる。米調査会社トムソン・ロイターの集計によると、1~9月のM&Aは3兆2484億ドル(約370兆円)と前年同期より39%増え、同期間として過去最高となった。最大は武田薬品によるシャイアー買収だった。
各社は新薬の開発に鎬を削っているが、それは闇夜に針の穴に糸を通すようなもので至難の業だ。創薬の成功確率は3万分の1とされ、ひとつの薬ができるまでには開発資金が2000億円近くかかるといわれている。小野薬品工業の「オプジーボ」は、それこそ奇跡に近い、日本発の画期的な新薬なのだ。
創薬の難易度が上がっているため、世界の大手製薬会社は、有望な新薬の種を持つスタートアップ企業を買収し、新薬の候補を揃える戦略に転換した。
バイオ医薬品大手、米ギリアド・サイエンシズは17年、がん免疫治療薬を開発する米カイト・ファーマを1.36兆円で買収した。仏大手サノフィも18年1月、血友病治療薬の米バイオベラティブを1.29兆円で買収した。
売上高1.8兆円・世界18位の武田薬品が、売上高1.7兆円・世界19位のシャイアーを買収すれば、売上高3.5兆円・世界9位のメガファーマが誕生する。逆に、買収できなければ、今度は武田薬品が買収される側に回ることになる。
武田薬品は重大な岐路に立たされているといえる。
(文=編集部)