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食の分野はまったく新しい味では定着しづらい
「さらに、コッペパンブームの他の要因を考えると、いわゆる“進化系”が各専門店の目玉になっていることがわかります。プレーンな状態で売るだけでなく、いろいろな具材をサンドして、本来強い特徴がない食材に付加価値を付けています。これを消費者が支持しているわけです」(同)
有馬氏によると、食品には「ナタデココ」「パンナコッタ」「ティラミス」など当時の日本人からしたらまったく目新しい食品がブームになるケースと、今回のコッペパンや、おにぎり、サンドイッチなど、すでに一般的なものに付加価値を加えて流行るケースの両方があるという。だが、定着しやすいのは後者。それはゲームなどのメディアコンテンツによる他分野と比べて、食の分野での目新しい味は人々の生活に完全に定着するのがはるかに難しいからだそうだ。
「数日間海外旅行をして現地の食べ物に舌鼓を打ったとしても、しばらくすれば日本食が恋しくなるように、人間の食べ物に対する好みは非常に保守的です。そのために食べ物のブームは一過性で終わることが多いんです。今回のコッペパンブームを見ると、日本人が親しんだ味というベースがあって、そこから派生・展開しています。だからこそ受け入れられ、定着に向かっていると思われます。もし、企業がこれから新たな食べ物を展開して定着させたいのであれば、日本人に従来から親しみが持たれている食材をベースにしたほうが成功の可能性が高いのではないかと私は感じています」(同)
食の好みは生まれ育った環境からの影響が大きい。だからこそ、我々は親しんだことのある味を心のどこかで欲している。この無意識の感覚をしっかりと形にすることが、新たな食品を提供する側に求められることなのだろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)
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