10月は家族客増といった禁煙化のプラス面が強く出たほか、営業時間を変更したことや、期間限定で1111円で串カツ11種類食べ放題を実施したことなどが寄与した。11月は前年の同月が大幅増(前年同月比14.7%増)だったことの反動や前年同月と比較して祝日が1日少なかったことなどでわずかにマイナスとなっているが、こういった特殊要因を除いた商売の動向は悪くなかったと考えられる。
禁煙化をめぐっては、9月に「禁煙化感謝祭」と名付けた割引キャンペーンを実施したほか、11月から、喫煙を我慢して来店していることを示すという意味でタバコを店員に見せるとドリンク1杯が増量になる「ノンスモーキングチャレンジ」を通常サービスとして始めている。こういった施策を通じて禁煙化を積極的にアピールし、喫煙を嫌う人や健康に気を使う人の取り込みを図った。
情報公開の姿勢が消費者の信頼を勝ち取ったか
健康志向の人を取り込む施策も積極的に行っている。たとえば、スポーツ庁が始めた、歩くことで健康増進を図る官民連携プロジェクト「FUN+WALK PROJECT」に参画し、8000歩を歩いた人に割引価格のセットメニューを提供するなどの取り組みを10月から始めている。これは、イメージアップにもつながりそうだ。
イメージアップを図るため、CSR(企業の社会的責任)にも積極的に取り組んでいる。たとえば、店舗で出る有機性廃棄物で作られた堆肥を畑にまき、その畑にキャベツの苗を植えてのちにキャベツを収穫する取り組みを17年から始めた。今年12月には、同社従業員とその家族でキャベツを収穫してそれを一部の店舗に納品し、お通しや「ちりとり鍋」の具材として使用する取り組みを行った。
大義に沿った施策も積極的に実施している。禁煙化やCSRもそうだが、プレミアムフライデーで行っている割引キャンペーンなどがそうだろう。串カツ田中は17年1月からプレミアムフライデーの認知度向上と「月末金曜日=串カツ田中」のイメージを強めることを目的に、月代わりでプレミアムフライデー向けの企画を実施している。政府によるプレミアムフライデーの取り組みは失敗に終わったとの声は少なくないが、とはいえ、「個人消費の活性化を目的とした政府が進めている取り組み」という大義は厳然と存在し、そのもとでの串カツ田中の施策に効果がまったくないということはないだろう。
串カツ田中は、こういった施策の実施を積極的に公表している。特徴的なのは、悪いことについても積極的に開示していることだ。先述の盗撮事件もそうだが、たとえば、禁煙化のマイナス面もしっかりと公表している。禁煙化初月の売り上げがマイナスになったことを“積極的”に公表する必要はないと思うが、串カツ田中はそのことを積極的に詳細にわたって公表している。路上喫煙やタバコのポイ捨てがあったことなどマイナスの印象が強い出来事も発表したのだ。積極的な情報開示を行うことで信頼を勝ち取ろうとしているようだ。
このことは売り場にも好ましいかたちで現れているように思う。筆者の感覚では、串カツ田中の接客サービス力は高いと感じる。積極的な情報開示を行うことで顧客から信頼を獲得している面があるが、同じように店舗従業員からの信頼も獲得しているようで、それにより高い接客サービスを実現しているのではないか。そしてリピーターの確保につながっていると筆者は考える。
こういったことが原動力となり、串カツ田中は好業績を続けることができている。しかし、盗撮事件が水を差す格好になってしまった。今回はそれほど大きな問題にはなっていないが、油断は禁物だろう。これ以上の問題が起きないとは言い切ることはできない。これを機に、総点検を実施する必要があるだろう。いずれにしても、気を引き締める必要はありそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。