SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のLINE(ライン)のアプリを見ていて、驚いたことがある。同社のアプリに実装されたショッピングの機能をタップすると、楽天などのネット通販大手企業に加え、さまざまな企業のネットショッピングにアクセス可能だ。音楽のオンライン配信、漫画の購読に加え、ホテル検索などの旅行関連サービス、保険などの金融サービスなど、多種多様なサービスが利用できる。
もはやLINEをSNS大手ととらえることは適切ではない。同社は、さまざまなサービスや商品購入の“ゲートウェイ(入口)”プロバイダーとしての役割を強めている。背景には、SNSの影響力の大きさがある。LINEは自社の基盤であるSNSのテクノロジーをさらに強化しようとしている。興味深いのは、同社が自前の取り組みに加え、社外(個人や企業)などとの連携を重視していることだ。
そうした企業の存在は、他の企業や産業におけるイノベーションの発揮につながる可能性がある。新しい取り組みを重視する企業が増えれば、わが国の経済にもポジティブな影響があるだろう。国際的にITプラットフォーマーによる個人情報の不正使用などへの懸念が高まるなか、LINEがデータの保護と活用を両立し、新しいテクノロジーの開発と実用化に取り組むことを期待したい。
リアル世界とネット・ワールドの融合
LINEの経営を見ていると、SNSの本質がわかるような気がする。従来、LINEとはメッセージ送信のためのSNSアプリを手掛ける企業である、との印象が強かったように思う。重要なことは、同社が実社会=リアル、とインターネット空間の融合を目指していることだ。
同社は、SNSのヒットによって獲得したユーザーベースを出発点にして、実際の社会(リアル、オフライン)とネットワーク空間(オンライン)をつなぐこと(ネットワーキング)を目指そうとしている。この考えは、“O2O(Online to Offline)”とも呼ばれる。それは、ネットワーク空間であれ実店舗であれ、消費などの経済活動をデータとして捕捉できるようになることといってもよい。