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オリーブ栽培が日本の農業の救世主に…日本中で増加の不思議、高齢農家も続々参入

文=小川裕夫/フリーランスライター
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 すでに農業を基幹産業とする地方都市では、耕作放棄地だらけになっている。なおかつ、離農者は街を離れてしまうために空き家も増加中だ。仮に政府が地方創生のためにUターンやIターンを呼び掛けて若者を増やすにしても、いったん耕作放棄地になった土地を農地へと回復させるにはかなりの歳月を要する。その間、農業を志向して地方都市に移住した若者たちは無収入を強いられる。そんな惨状だから、農村に移住しようなどと考える若者は少ない。

 農業を基幹産業とする市町村は、耕作放棄地を増やさない工夫を重ねる。しかし、なかなか妙案が生まれなかった。そうしたなか、最近になって一筋の光明が見えようとしている。その新たな光明が、オリーブ栽培だ。

 イタリアやスペインなどで盛んに栽培されているオリーブは、これまで主に食用で使用されてきた。しかし、近年では美容・化粧用としても使用されるようになり、需要が拡大。オリーブ栽培は各地で盛んになっている。気候や日照時間といった条件が適していないことを理由に、日本ではオリーブ栽培は不可能とされてきた。しかし、温暖化や栽培技術の発達、品種改良が進み、日本でもオリーブ栽培が可能になってきている。

 香川県小豆島は先駆けてオリーブ栽培に着手し、2003年には構造改革特区に認定された。構造改革特区の認定により、農業生産法人の参入が認められる。これで飛躍的に生産量は増加した。香川県小豆島の成功を受け、南房総や伊豆半島などでも農業法人によるオリーブ栽培への取り組みが始められている。

 そして、香川県同様に房総や伊豆でも成功を収める。成功例が次々と誕生したことで、ほかの地域でもオリーブ栽培への転換が始まっている。香川県職員は、こう話す。

「一般的に、農作物は収穫までの間に摘果と呼ばれる間引き作業を行います。この摘果は年に数回しなければならず、しかも重労働です。農家にとって摘果は負担が大きい作業です。摘果の重い負担がおじいちゃん・おばあちゃんだけの農家を廃業に追い込んでいる要因にもなっています。しかし、オリーブ栽培は摘果の回数が少なく、摘果の作業量も少ない。そのため、身体への負担が小さく、高齢者だけの農家でも無理をせずに続けられます。そうしたことから、地方ではオリーブ栽培への挑戦が始まっているのです」

農業の6次産業化

 オリーブ栽培に着目したのは、高齢化した農村ばかりではない。原発事故で避難民を多く出した福島県浜通り地区でも試みられている。浜通りは、いまだに避難先から帰還している農家が少ない。浜通りのオリーブ栽培は、人手が少なくてすむオリーブ栽培を復興の第一歩にしようという思いからスタートした。

 これまでは、福島県のような寒冷地でオリーブ栽培は不可能とされてきた。しかし、オリーブ栽培が注目されるにしたがって、その北限に挑戦する自治体や農家が出てきている。最近では、宮城県石巻市でもオリーブ栽培への取り組みが始まった。同時にオリーブ加工やそれに付随する観光農園といった動きも出てきた。いわゆる農業の6次産業化がオリーブを触媒にして進んでいるのだ。

 オリーブ栽培は日本の農業を、そして農村を革命的に変える可能性を秘めているのかもしれない。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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