賃貸アパート大手、レオパレス21は創業家出身の深山英世社長が代表権のない取締役に退き、後任に宮尾文也取締役常務執行役員が昇格する。いずれも5月30日付。建築基準法の基準に合わないアパートを施工した問題が拡大しており、深山社長は「一定のけじめをつけ、責任を果たす意味で辞任を決めた」と語る。
自分が取締役として経営陣に残ることについては「物件オーナーや法人顧客との関係を維持するため」と強調したが、説得力に欠ける。
2019年3月期の連結決算の売上高は18年同期比4.8%減の5052億円、営業利益は67.8%減の73億円、最終損益は686億円の赤字(18年同期は148億円の黒字)に転落した。空き室が増加したことに伴い賃料収入が減り、その一方で施工不良が見つかった物件の補修工事費が膨らんだ。最終損益が赤字になるのは8年ぶり。赤字幅は10年3月期の790億円の赤字に次いで創業以来ワースト2だ。年間配当はゼロ(同22円の配当)となった。
18年4月に表面化した施工不良のアパート問題は、調査が進むにつれて、より深刻になっている。天井裏の「界壁」と呼ばれる仕切り壁がないことが判明。当初は1990~2000年代に手がけたアパートが中心だったが、18年まで販売していた最新物件でも不備が見つかっており、問題発覚から丸1年たった現在でも調査が続いている。調査の過程で深山氏が社長就任後の施工物件でも不備が見つかったことや、大幅な赤字計上、無配転落の責任を取ったとしている。赤字決算と株価下落で企業価値を大きく損なった。
外部調査委員会が3月にまとめた中間報告は、創業者の深山祐助・元社長の関与を指摘、組織ぐるみの不正の疑いが深まった。
19年3月末時点で全物件約3万9000棟の4割弱、調査が済んだ約2万棟のうちの7割超の物件で不備が見つかった。5月14日、新たに1029棟で不備が見つかり、施工不良の物件が4月末時点で1万5628棟に拡大したと発表した。4月末までに全体の棟数の約半分の調査が終わったが、約7割で不備が見つかっている。
国土交通省はレオパレスに対し、10月までにすべての調査を終えるように指示しているが、調査の終えていない物件が全体の半分ほど残る。すべての部屋の補修を終えた物件数は800棟にとどまる。施工不良物件が、さらに増える可能性があり、前途は多難だ。
法人の解約が相次ぐ
20年3月期の業績予想は、「楽観的過ぎる」(外資系証券会社のアナリスト)などと酷評されている。売上高は微減の5022億円だが、営業利益は22億円、最終損益も1億円の黒字転換を見込む。補修工事に全力をあげ、入居者の募集を順次再開し、入居率を3月末の84.33%から1年後に90%近くまで回復させるとしている。とはいえ、計画通りに入居者が戻ってくる保証はない。
レオパレスの入居者は法人契約が多いことで知られる。19年3月末時点で契約戸数48.4万戸のうち、法人契約が28.0万戸と全体の57.9%を占める。個人契約は16.3万戸、学生契約は4.0万戸。法人は転勤者のための借り上げ社宅として利用することが多い。工場の近くでは季節期間工、建設工事の現場では作業員の宿泊施設となっている。
施工不良問題が発覚後、企業の社宅解約が相次いだ。18年3月末に30.9万戸あった法人契約は、翌19年3月末には28.0万戸と2.9万戸減った。