補修を終えるまで入居者の募集を停止したため、入居率は毎月低迷。19年3月期末の入居率は84.33%と1年前(93.72%)から9.39ポイント低下した。それが4月は一段と悪化した。契約戸数は47.3万戸で、前月比1.1万戸減、前年同月比5.6万戸減。入居率は82.35%で、前月比1.98ポイント減、前年同月比10.47ポイント減となった。
受注高の落ち込みも大きい。19年4月末の受注高は10億円にとどまり、前月比13億円減、前年同月比50億円の減少だ。施工不良の問題は事業全体に深刻な影響を及ぼしている。
家賃収入が保証賃料を下回る「逆ざや」のリスク
レオパレスはオーナーからアパートを一括借り上げ、入居者に転貸する「サブリース」の形式をとる。入居率が下がれば、家賃収入がオーナーに保証している賃料を下回る「逆ざや」となる。「逆ざや」の目安は、入居率80%がとされる。
過去を振り返ってみよう。
10年3月期の最終損益は790億円の赤字、11年3月期も408億円の赤字と2期連続の巨額赤字に沈んだ。原因は08年秋のリーマン・ショック。世界的な金融危機の影響をモロに受けた。工場への派遣社員や期間従業員の入居率の低下が地方都市にまで広がりを見せた。
20年3月期は10・11年と同様に、入居者数の減少による「逆ざや」になる可能性が高い。というのも、建築不正の全容が明らかになっておらず、収束のメドが立たないからだ。生命線の入居率が想定を下回る状況が続けば、経営は一段と厳しくなる。
6月末に予定されている株主総会後で、深山氏が取締役として残るかどうかも不透明だ。「きちんとけじめをつけるべきだ」との声が社内外に多い。
改修工事費や引っ越し費用などとして、4回にわたり計547億円の特別損失を計上したが、今期、どれだけの特別損失が出るかについても明確になっていない。2月段階で特損は430億円だった。
宮尾新社長は、創業家以外から初の社長となるが、同氏を選んだ理由について深山氏は「(宮尾氏は)施工部門の所属しておらず、一連の問題に関与していないこと、経営企画部門が長く会社全般に詳しいことなどから後任に適任と判断した」と説明している。
深山氏は、施工不備を招いた原因を「順法と、ものづくりに対する意識が欠けていた。商品開発も急いでいた。順法性を担保しなければならない組織がスピードについていけず、こういうことになったのだろう」としたうえで、不正への関与を「知らなかった」と否定している。
第三者調査委員会が5月下旬に最終報告書をまとめる見通し。報告書の内容によっては、「2020年、黒字転換」としている会社側の見立てが大幅に狂うこともあり得る。
物件のブランドイメージの悪化は避けられない。今年3月の入居率は繁忙期にあるにもかかわらず、84%と過去5年間でもっとも低くなった。4月は82.35%と、さらに続落した。この数字の意味は重い。
旧村上ファンド系投資ファンドのレノが、レオパレス21の株式保有比率を6.24%まで増やしたことが5月14日に判明。同日付で関東財務局に提出された大量保有報告書で明らかになった。18年9月期末の大株主名簿によると、筆頭株主の持ち株比率は4.2%。この通りなら、レノが筆頭株主になった可能性がある。保有目的は「投資および、状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為などを行う」としている。
さらに、5月21日、レノと共同保有者2者と合わせた保有割合が14.13%となったことが判明した。20日に12.56%まで高まっていたが、さらに買い増した。23日には16.18%に持ち株が増えた。株価の波乱要因になるかもしれない。
(文=編集部)