ここ最近はユニクロなどのファストファッション勢に押されてはいるが、しまむらは1953年に1号店がオープンして以降、日本のアパレル業界を長きにわたって支えてきた。
2019年2月期決算によると、売上高は5459億円(前期比3.4%減)、営業利益は254億円(同40.7%減)、純利益が159億円(同46.2%減)。苦境に陥っているのは一目瞭然だが、安さと品質を兼ね備えた掘り出し物をいかに見つけるかという“しまパト”(「しまむらパトロール」の略)にいそしむファンも多いし、ファッションコーディネートサイトの「WEAR(ウェア)」を見ても、しまむら商品のオシャレな活用例がいくつも投稿されている。
また、しまむら傘下の田原屋が関東・関西・中部に165店舗(今年2月20日時点)を展開しているパシオスも、しまむら並みに激安かつ豊富な品ぞろえだ。北海道から沖縄県まで1428店舗(同)を擁するしまむらに比べれば小規模だが、こちらも庶民の味方として親しまれている。
そこで今回は、しまむらの「CLOSSHI」(クロッシー)、パシオスの「SUFFUSE」(サフューズ)といったプライベートブランド(PB)商品のなかから、筆者が商品をピックアップ。3部門に分け、どちらのほうが優秀なのかを独自の基準で対決させてみた。
【トップス】しまむらは綿、パシオスは麻
まずは、両者のトップスから比較していこう。
しまむらは近年、夏向け商品の「素肌涼やか」シリーズが定番となっており、テレビCMでの宣伝にも注力。どちらかといえばレディースの「素肌涼やかニットカーディガン」(1900円/税込、以下同)と「素肌涼やかシャツワンピース」(2900円)のほうが大々的に取り扱われているようだが、メンズでも「素肌涼やかシャツ」(1900円)が用意されているので、今回はこちらの商品を取り上げたい。
この「素肌涼やかシャツ」には遮熱糸が使われており、従来の綿100%の生地よりも最大で7度、涼しく感じられるとのこと。筆者が試着してみたところ、ひやっとした着用感とオーガニックコットンの肌触りが心地よかった。
一方、パシオスが今年の春夏の“パワーアイテム”としてプッシュしているのが「フレンチリネンシャツ」(2300円)である。“接触冷感”というコンセプトはしまむらの「素肌涼やか」シリーズと共通しているものの、しまむらはコットン(綿)、パシオスはリネン(麻)なので、素材の違いは明らかだ。
リネンのざらりとした質感は、コットンに比べると好みが分かれるかもしれないが、いざ着てみると通気性はバツグン。汗をかいてもべたつきにくいし、これからの暑い季節、さらりと羽織って外出したくなるアイテムに仕上がっている。おまけに、消臭テープが使われているのも嬉しいポイントだ。
そして、しまむらの「素肌涼やかシャツ」はデニム風のものと、縦シマ模様のものくらいしかデザインのバリエーションがないのに対し、パシオスの「フレンチリネンシャツ」は、見た目的にも涼しげなパステルカラーを複数展開。400円高くても、ここはパシオスに軍配を上げよう。
【インナー】製薬会社とコラボのしまむら
続いては、インナー部門だ。今回はトランクスやブリーフではなく、シャツにスポットを当てたい。
先攻は、しまむらの「FIBERDRY」(ファイバードライ)シリーズ。あの小林製薬とのコラボレーションにより、「KOBA-GUARD」(コバガード)という抗菌剤が採用されているため、汗をかいたときの不快なにおいを極力抑えてくれる。
通常タイプの商品は1枚780円だが、同じ「FIBERDRY」でもコットン100%タイプの商品と、“接触冷感”の「さらっと爽快インナー」はそれぞれ2枚980円という価格設定。せっかくならば、より上質で1枚あたりの単価も安い2枚組商品を買うのがいいだろう。特にコットン100%タイプは、生地の表面を凸凹にした“カノコ編み”でつくられており、その風通しの良さは、ぜひとも体感してほしいところだ。
後攻は、パシオスの「紳士パッケージインナー」シリーズ。こちらは“吸汗速乾”の「爽(メッシュ編み)」、“接触冷感”の「冷(天竺編み)」(各580円)に加え、消臭効果に特化した「爽(カノコ編み)」と「涼(フライス編み)」(各2枚980円)も売られている。
なかでも「爽(メッシュ編み)」は“超軽量メッシュ”がキャッチコピーで、手に持ってみたときの軽さは、ほかのタイプと明らかに異なる。店頭にもサンプルがハンガーにかかっているはずなので、要チェックである。
さて、今回は“接触冷感”同士ということで、しまむらの「さらっと爽快インナー」とパシオスの「冷(天竺編み)」を筆者が着比べてみたところ、そのナチュラルな着心地に感心したのは、しまむらのほうだった。日頃はユニクロの機能性インナー「AIRism」(エアリズム)シリーズを愛用している筆者だが、こちらを引き合いに出しても、まったく遜色がない。
かといって、パシオスが劣っているわけではなく、むしろ肌に伝わるひんやり感は、しまむらを上回っていたように思う。もっと気温が上がった頃に改めて着比べたら、評価が逆転しているかもしれない。
このとおり、甲乙つけがたいのが正直なところなのだが、2枚980円(=1枚あたり490円)というコストパフォーマンスも含め、ここではしまむらを勝者としたい。
【ボトムス】デニムに機能性とオシャレを求めるなら……
最後の部門はボトムスで、プライベートで重宝するデニムパンツを比べていく。
パシオスの「紳士接触冷感ストレッチデニムパンツ」は2300円という低価格ながら伸縮性に優れ、誰でもオーソドックスに穿きこなせそうな逸品。やはりここでも“接触冷感”がテーマになっており、長時間穿き続けていても蒸れることはなかった。
だが、筆者としては、しまむらの「撥水デニムパンツ」及び「撥水ワンウォッシュデニムパンツ」(各2900円)を推したい。商品名に“撥水”と謳われているのはダテではなく、予期せぬ悪天候に見舞われたとしても、ちょっとやそっとの雨粒なら弾いてくれるのだ。生地に水シミがついてしまう恐れがないので、普段使いからアウトドアまで、これ1本で対応できることだろう。
さらに「撥水デニムパンツ」のほうは程よい色落ちがアクセントとなっており、「しまむらといえども、多少はオシャレしたい」というニーズをも満たしてくれる。これはパシオスにはない強みであり、600円の差額を埋めるだけの価値があるといえそうだ。
2勝1敗でしまむらが勝利だが、甲乙つけがたい大接戦
以上3部門の結果をまとめると、次のとおり。
【トップス】×しまむら ○パシオス
【インナー】○しまむら ×パシオス
【ボトムス】○しまむら ×パシオス
あくまでも筆者の独断ではあるが、2勝1敗でしまむらの勝利となった。インナーの「FIBERDRY」で小林製薬と異業種タッグを組んでいたことからもわかるように、そのブランド力を生かした商品開発は、しまむらの確かな武器だろう。
ただ、広い店内から良品を探し出す楽しみはパシオスでも十分に味わえたし、商品ラインナップの多様さは申し分ない。それこそ、“しまパト”ならぬ“パシパト”だって成り立つはずだ。
本格的な夏シーズンに備えて服を買い足そうと考えているようであれば、この記事も参考にして、しまむらやパシオスに足を運んでみてほしい。
(文=宮元大地/A4studio)