東京電力管内で電力需給がひっ迫し、東日本大震災時の「計画停電」を彷彿とさせる事態が現出する可能性が高まり、都内に緊張が走った。
要因の一つは16日に発生した福島県沖を震源とする地震により、東京電力管内に送電している複数の発電所に影響が出たことだった。新地発電所(福島県新地町、石炭火力発電所100万キロワット2基)では輸送船から石炭を陸揚げする荷揚げ用設備2機(全4機)が倒壊し、復旧の見通しが立っていない。また広野火力発電所6号機(同県広野町、石炭火力60万キロワット)も地震で運転を停止したままだ。加えて、気温の急激な低下に伴う使用電力上昇が予測されることから、政府は21日夜、「電力需給ひっ迫警報」を発令。節電を呼び掛けたが、22日午後3時現在、状況は芳しくない。
暖房の室温20℃はあくまで目安「一層の節電を」
東京電力は22日午後、「でんき予報」を更新し、警戒を呼び掛け続けた。同電力管内の電気使用量は同日午後1時台に4525万キロワット(実績値、供給力は4253万キロワット)となり、供給予測値(供給量とは別)の106%に達したと発表した。正午ごろには4434万キロワットで、供給予測値は102%だったが増加した。経済産業省はこのまま節電が行われない場合、東京電力管内で一部停電が起きる恐れがあるとして節電を呼びかける事態になった。
東京電力パワーグリッドは不足分を揚水発電所の出力調整で対応。発電で利用できる残りの水量とのにらみ合いが続いた。
日本気象協会の22日の実況値によると、東京・大手町の同日正午の気温は1.9℃。みぞれが舞う真冬日であったこともあり、メディア各社が節電の目安としている「室温20℃」の設定であっても相対的に電力消費が高まっていた可能性もある。
資源エネルギー庁電力基盤整備課の担当者は「あくまでも、『20℃』はひとつの目安であり、下げられるのであれば暖房の設定温度をさらに下げる、使っていない部屋の電気を消す、使っていない機器の電源を落とすなど、日常生活に支障のない範囲で、現在の取組より踏み込んだより一層の節電をしていただきたいです」と話した。
経済産業省は電力需給が極めて厳しい状況だとして、東京電力の管内に加えて東北電力の管内にも初の「電力需給ひっ迫警報」を発令。さらに一部地域で停電の恐れがあるとして飲食店のネオン消灯などを呼び掛けた。
ネット上では原発再稼働を主張する声も
一方、インターネット上では22日午前から、福島第一原発事故を受け、東電管内で停止中の東電・柏崎刈羽原発の再稼働を求める声も上がった。経産省関係者は「原子力規制委員会の審査に加え、立地自治体や住民の合意など再稼働に向けた法的・組織的なさまざまな手続きが必要です。そして設備上の安全性やテロ・武力攻撃事態対策などが整備され、すべてがOKになったとしても、実際に停止中の原発を試運転もせず、いきなり営業運転ができるものではありません。つまり、こうなってしまっては他地域の電力管内からの電力融通か、利用者への節電を呼び掛けるしかないのです」と語った。
同日の閣議後の会見で、松野博一官房長官は原発再稼働について、ウクライナ戦争などによりエネルギー価格高騰なども踏まえ、「いかなる事情より安全性を最優先し、原子力規制委員会が審査し、新規制基準に適合すると認められた場合のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めるのが政府の方針で、その方針に変わりはありません」と述べている。
【22日午後4時55分追記】
東電は同日午後4時半、「でんき予報」を更新し、供給予測値を98%と発表した。なおも厳しい状況が続いているとして、節電を呼び掛けている。