札幌市東区にある納骨堂「御霊堂(みたまどう)元町」で、とんだひと騒動が起きている。ことの発端は市内にある納骨堂を運営する宗教法人「白鳳寺」が10月9日に開いた説明会で、納骨堂の建物が強制競売にかけられていたという事実を明らかにし、利用者に遺骨の引き取りを求めたことから始まる。
御霊堂元町は773件もの檀家を抱える納骨堂で、札幌市内にある葬儀会社から融資を受けて2012年ごろに開業。建物はもともと専門学校として使用されており、札幌市営地下鉄東豊線の「元町」駅から徒歩6分、近くのバス停からは徒歩2分とアクセスがよい立地にある。白鳳寺によると「夕方でもふらっと故人様に会いに来られると好評」(御霊堂元町のホームページより)だといい、問い合わせは24時間対応という手厚いサポートも魅力だった。
近年、「墓じまい」などを理由として、都市部での屋内型納骨堂が人気となっている。お墓の情報サイト「いいお墓」が今年実施した「お墓の消費者全国実態調査」によると、「一般墓を購入した」という回答は25.8%となり、2018年の46.7%よりも大きく減少。その一方、納骨堂は19.6%から23.4%へと増えている状況だ。
では、その納骨堂を舞台に、一体何が起きているというのか。白鳳寺によると、債権者に負債を返済できず、昨年11月に債権者が納骨堂の建物の差し押さえを行ったという。債権者は前述の葬儀会社で、今年7月に行われた強制競売により市内の不動産会社が建物を落札した。
ただし、札幌市の「札幌市墓地等の経営の許可等に関する条例」では、経営主体が地方公共団体と宗教法人、公益法人に限られている。そのため不動産会社は経営を引き継ぐことができないのだ。不動産会社側は今回の事態を受け、利用者を救いたいという気持ちは大いにあるものの、「行政手続き上、継承は断念せざるを得ない」とコメントを残している。
札幌市から30回の行政指導
この騒動のなか、白鳳寺の代表は「だますつもりはない」などと釈明しているが、この事態に利用者は黙っていない。
「バカにしていますよね?」
「ふざけたことを言わないで」
先日、急遽行われた利用者への説明会は紛糾した。一部では開業当初から赤字となり、背負った負債が約3億円にまで大きくなっていたとの報道や、財務書類が見当たらないなどとして今年7月から10月にかけて30回にも上る行政指導を札幌市から受けていたことも明らかとなっている。
納骨堂や火葬場などの埋葬や管理を円滑に行うことを目的に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」には、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、省令の定めるところにより、図面、帳簿又は書類等を備えなければならない」(15条1項)と明記されている。同法ではこれに違反した場合、1000円以下の罰金または拘留、もしくは科料となる。
それに加えて前述の強制競売が行われている最中にもかかわらず、新しい契約の引き受けを続けていたとの情報もある。刑法では「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役」との規定があり、わざと、故意にだますという意思があれば詐欺罪に問われるとしている。
なお白鳳寺によると、札幌地裁に強制執行までの期間の延長を要請したところ、当初予定されていた10月24日の強制執行の日時は11月21日に延長されたという。また白鳳寺は11月13日に説明会を再度開く予定としており、本稿記者もその説明会の取材を白鳳寺に要請中だ。
故人に対して祈りを捧げ、思いを馳せる場所となるはずだった納骨堂を舞台にして起きたこの騒動。札幌市も連絡が取れず、現在行方をくらませている白鳳寺の代表からどのような説明があるか注目される。
(文=小林英介)