8月16日、TBS/JNNのニュースサイト「TBS NEWS DIG」で「墓じまい」の増加と新しい供養の仕方について紹介された。石材業界団体の調査によると、少子化を背景に墓じまいを選択する人が増え、継承者がいないことを理由にした墓じまいがおよそ半数、次いで場所が遠いという理由が30%近くに上ったという。
さらに、新しい供養の方法として注目されているのが、代々の墓を閉じ、共同の墓に入れる「永代供養」。「TBS NEWS DIG」でも紹介されていた長野県善光寺・大勧進では、2020年より永代供養の受け入れを始めたそうだが、納骨にかかる費用は10万円からで、その後の管理料などはかからず、春夏の彼岸やお盆の時期には、法要を行い供養するそうだ。
一方、全国37都道府県に営業所を持つ第一交通タクシーは、お墓参りの代行サービスを2020年からスタート。コロナ禍で墓参りができないという方々からの需要を見込んで生まれたサービスで、これまでに全国で約350件の依頼を受けているそう。近年ではリモート墓参りというものもあり、徐々に供養の仕方が変化しているが、今後このような代行サービスや供養の仕方は一般的なものになっていくのだろうか。
そこで今回は墓じまいが増加している要因や、供養の仕方が今後どのように変化していくのかについて、「相続」「介護」「葬儀」「お墓」などシニア市場に関するネットメディアを運営している株式会社鎌倉新書の白井夢乃氏に話を聞いた。
安くはない? 墓じまいの手順と費用
まず、どういった手順で墓じまいが進められるのだろうか。
「まず今のお墓を管理している場所へ、次の納骨先について相談していただく必要があります。例えば引っ越しをするとき、住民票を移したり転入届を提出したりしますが、ご遺骨も同様に改葬証明書や改葬許可証といった書類を自治体で発行する手続きが必要になります。
そして、みなさんがイメージしている一般的な石のお墓の場合は、墓石を撤去し、お墓が建っていた場所を更地にすることが次のステップになります。また、墓じまいをするときや新しいお墓を建てる際にお経をあげてもらうかについても、ご家族で相談していただきたいポイントです」(白井氏)
そんな墓じまいの費用も気になるところだ。
「弊社の調査によると総額68万円が平均値でした。更地に戻す費用は、相場は1平方メートルあたり10万円程度といわれていて、もし3平方メートルであれば30万円程度となります。またお布施の平均額が35万円程度で、檀家を離れる場合のお布施は40万円を超える場合もあります。ですから墓じまいの総額は50~70万円となることが多いと言われています。もちろん別の場所に新しくお墓を用意するのであれば、また別途の費用がかかります。墓じまいをすることは決して安く済むわけではないということですね」(同)
少子高齢化と都市部への人口集中が要因
では、なぜ近年墓じまいが増加しているのだろうか。
「大きく分けると要因は2つあります。『TBS NEWS DIG』の記事のとおり、要因は少子高齢化と都市部への人口集中です。墓地が遠方の場合など、ご高齢の方々はお墓参りに行くだけで身体の負担になってしまうこともありますし、一般墓といわれる家単位で承継していくお墓は継承者が必要になるため、少子化も進んでいる現在、子どもや孫の負担にならないよう墓じまいを検討される方が多くいらっしゃいますね。
また、お墓を維持するには定期的な管理が必要ですが、都市部に在住で地方や通うのが困難な距離に墓地がある場合は管理も負担になるでしょう。こういった要因が墓じまいの増加につながっていると考えています」(同)
では、墓じまいした後はどういった供養の仕方になるのか。
「近年お墓の種類は多様になってきており、自宅から比較的近い場所に建て直す方や、継承者の必要がない永代供養を選択される方も増えてきています。また、墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬や、納骨堂を利用するという選択肢もあります。ほかには都市部に限られますが、ビルの中に搬送式の納骨堂があり、受付でブース番号をアナウンスされた後、そのブース内でお参りするという形式のものもあります」(同)
どのような形で供養したいのか、さらに納める遺骨の数によっても選択肢はさまざまだという。ではそれぞれ供養の仕方は、現在どのぐらいの割合で選択されているのだろうか。
「弊社の調査によると、2018年頃までは全体の50%弱の方が墓石を立てる一般墓を選んでいましたが、ここ3年で一般墓の割合は25%程度で定着しています。代わりに樹木葬を選ぶ方が増えており、今では全体の40~45%を占めています。あとは、納骨堂が20~25%ほどで、樹木葬と納骨堂を合わせると60%強といったところでしょうか。直近では永代供養の認知度も上がってきている印象ですが、まだ急激に増えてきているということはありません」(同)
今後、供養の仕方は変わっていくのか
では最後に、リモート墓参りのような新しい供養の形が今後普及していくのか、また供養の仕方がどのように変化していくのかについて伺おう。
「最近はメタバース空間でお墓参りをするというサービスもあるようですが、確かにこれだけネット社会になってきている現状を考えれば、そういった新しい供養の形が生まれるのもわかります。とはいえ、供養は弔うという気持ちの部分が大きいものですから、そういったメタバースでのお墓参りが急激に普及するということはないと思われます。
今年弊社で葬儀に関する調査を実施したところ、今までは家族・親族をはじめ友人・知人、地域の方、職場の方など幅広い関係性の方が参列する一般葬が主流だったのですが、現在はコロナ禍ということもあり主に家族・親族、近親者などが参列する家族葬が最も多いという結果になりました。ただ、この調査内でコロナ禍でなかったらどういった葬儀を希望していたかという質問があったのですが、本当は一般葬を望んでいたという回答が一番多かったんです。ですから、お亡くなりになられた方をしっかり弔って供養したいというお気持ちは、今も変わらずあり続けているのだと実感しました」(同)
墓じまいを検討する人々の背景には、コロナ禍といった突発的な問題よりも、少子高齢化などの社会背景の影響が大きいようだ。しかし、今後供養の形が緩やかに変化していくことはあっても、逝去した方をきちんと弔いたいと思う気持ちは不変的なものなのではないだろうか。
(文=A4studio)