『包丁人味平』という漫画をご存じだろうか。1973~77年にかけて「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載された料理グルメ漫画の先駆けであり、料理の世界に“対決”を持ち込んで大ヒットした。漫画の原作者は牛次郎(本名・牛込記)氏である。
牛次郎氏は『釘師サブやん』『スーパーくいしん坊』などの人気漫画の原作でも一世を風靡したが、86年、46歳のときに臨済宗妙心寺派医王寺で出家得度し、牛込覚心(うしごめかくしん)となった。89年には、静岡県伊東市に自ら設計した願行寺を建立し管長兼住職に就任した。
その願行寺が2016年10月から開始した、驚きの“永代供養”がクチコミで話題を呼んでいる。なんと、1万円ポッキリで13回忌法要までの永代供養をしてくれるというのだ。料金は1万円に手数料5000円(税別)で合計1万5400円。追加料金は一切不要だという。
骨壺を持ち込めない人は、ゆうパックで郵送することもできる。たったそれだけで、境内にある涅槃堂で12年間供養してもらえるのだ。いったい、なぜこんなに安いのか。どんな人が利用しているのか。東京で涅槃堂の受付窓口になっている、一般社団法人おもてなしの会の中根善弘代表理事に話を聞いた。
「牛次郎先生は原作の印税などで願行寺を建立され、今は牛込覚心というお名前で住職をされており、私は副住職を務めております。涅槃堂は日本全国どこから送っても、1万5400円で12年間供養いたします。それ以外はまったく管理費がかからないのが特徴です。
この価格も牛次郎先生がお決めになったもので、1万円は日本で一番安い納骨堂だと思います。5400円は私どもの手数料ですが、それでも日本一安いと自負しております。
牛次郎先生は元作家なので、コンクリート製の立派な書庫を2つお持ちでした。そのひとつにあった膨大な量の本をすべて図書館に寄贈され、その書庫を改造して納骨堂にすることで、スペースを有効活用しようと思われた。だから、この価格が可能なのです」(中根氏)
知られざる“墓じまい”の実態
一昨年10月のスタートから1年3カ月。現在までに、270体のご遺骨が収納されたという。
「ご遺骨は毎月平均して20体くらい郵送されてきます。一番多いのはお墓が高くて買えない方。また、高齢で実家のお墓を守りきれない方やお墓を守る跡継ぎがいない方も多いです。お金はあるんだけどやむを得ない事情で墓参りに行けない方や、子どもたちに負担をかけたくないという方もいらっしゃいます。そういう理由で“墓じまい”される方も、とても増えています」(同)
墓じまいとは、文字通り、お墓を解体・撤去すること。当然、墓から取り出した遺骨を別の場所に移す必要があり、遺骨を預けるにはまたお金がかかる。