「墓じまいしたら遺骨が33体も出てきた方がいらっしゃいました。ほかの霊園ですとお金がかかって大変ですが、私どもの涅槃堂では1体1万5400円なので、33体あっても50万円くらいで済みました。
30代の息子さんが火葬場からまっすぐお母さんのお骨を持ってきて、黙ってお金と埋葬許可証だけを置いて帰られたこともあります。私どもは理由を一切お聞きしません。東北の方で、東京に出たきり一度も実家に帰らず、結婚せずに身寄りもないまま亡くなられ、私どもの納骨堂に納められた方もいらっしゃいます。
涅槃堂で12年間お預かりした後は、そのまま無料で合祀墓に入ることができます。1万5400円で預けっぱなしの方が多いのは確かですが、微笑堂という参拝者向けのお堂もございますので、お参りやご法事もできるようになっております」(同)
さながら“遺骨の駆け込み寺”…生前予約も可能
ご遺骨の供養は、住職の覚心さんと、娘さんで寺を継ぐことが決まっている覚演さんが執り行っている。最近は行政からの問い合わせも増えたという。
「私たちは宣伝などもしていないので、クチコミでの広がりや自治体からのお問い合わせが多いですね。お墓事情では行政も困っているのです。埼玉・大宮の市営霊園からもお問い合わせがありました。生活保護の方が亡くなると、厚生労働省の規定で葬祭扶助費(~20万6000円)が出ます。でも、入るお墓がなければ行政が遺骨を抱えてしまう。近くのお寺に預けるだけでも5万円くらいかかりますので、それは行政の負担になってしまうからです」(同)
さながら“遺骨の駆け込み寺”といったところだろうか。元気なうちに生前予約する人も増えているという。
「実家のお墓に入れない方や核家族でお墓を守れない方などのなかには、生前予約される方もいらっしゃいます。先に1万5400円を納めて永代証書を発行しておくのですが、20~30件の例があります。
今のところ、値上げなどもまったく考えておりません。ご健在のうちに申し込まれて、何かあったら遺骨を郵送してもらえばいい。書庫はもうひとつあるので、2万体は納めることが可能です。特に墓じまいされる方々に利用していただければ、と考えております。
今は散骨でも10万円くらいはしますし、最近増えている直葬(通夜、告別式を行わない火葬のみの葬儀)でも都内で20万円くらいかかりますからね。仏教に興味がなく、『お葬式ってなんですか』『戒名ってなんですか』と聞かれる方がたくさんおります。お寺さんによっては高いところもあるし、お葬式だって確かに高いですよね。それを打ち破ろうというのが、この値段です。
私どもは葬儀を『人間という種の最後の卒業式だ』とご説明しています。お墓がなければ、どうぞ涅槃堂をご利用ください」(同)
(文=兜森衛)
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