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垣田達哉「もうダマされない」

餃子の王将で事件…テーブルにタレ&ガリ容器を常備は危険、簡単に異物や唾液が混入

文=Business Journal編集部、協力=垣田達哉/消費者問題研究所代表
餃子の王将で事件…テーブルにタレ&ガリ容器を常備は危険、簡単に異物や唾液が混入の画像1
餃子の王将のHPより

餃子の王将」の店内で撮影された、タレの入った瓶の中で複数の虫が動いている動画がネット上で拡散されている問題。運営する王将フードサービスは2月9日、動画が投稿された時期に類似した事案がフランチャイズ店で発生していたと謝罪した。本件については店側の管理不行き届きが原因とみられるが、ここ最近、回転寿司チェーンなど外食店舗での客による迷惑行為が相次いで発覚。飲食店での衛生管理問題が改めてクローズアップされている。

 一連の迷惑行為騒動の発端となったのが、1月、「スシロー」で少年が醤油ボトルや湯呑をなめて元に戻す様子を収めた動画がネット上に投稿された事件だった。当該少年と親はスシローに謝罪したものの、一時的にスシローの株価下落し客離れなど業績に大きな影響がおよぶ懸念が出たため、運営会社は民事・刑事で法的措置をとる考えを表明している。

 また、「はま寿司」では男性客が他人の注文を横取りしたり、レーン上を移動する寿司にわさびを乗せたり、少年が卓上に置かれたガリの容器に直接箸を入れて食べる動画などが投稿され拡散。「吉野家」でも客が紅生姜を直接箸で取って食べる動画が投稿されるという被害が発生し、各チェーンの運営会社はいずれも法的措置を取る考えを示すなど厳しい姿勢を見せている。

 今月に入っても「マクドナルド」の店舗が入ったフードコートの店内と思われる場所で、男性が飛沫防止用のアクリル板をなめる様子を撮影した動画が拡散。類似の事案は収まらないが、一連の騒動が外食業界全体に与える影響について、消費者問題研究所代表の垣田達哉氏に解説してもらう。

鼻水や唾液が容器に入る恐れも

「餃子の王将」は、店内のテーブルに置いていたギョーザのタレなどの調味料を撤去し、注文を受けてから店員が提供する形式に変更した。これは、食の安全(食品衛生)面を考えれば当然の措置といえる。

 一連の迷惑行為で、もっとも容易に異物が混入できると思われるのは、テーブルに置いたままにされたガリやショウガ、タレが入っている容器だろう。誰でも簡単に開けられる容器に、大量の食材が入れられている。座席についた客が、意図的でなくても、容器の蓋を開けてガリを取ろうとした時に思わずくしゃみや咳をしたとする。その際、鼻水や唾液が容器に入るかもしれない。トングでガリを取ればいいが、客が使っている箸でガリを取ったり、大きなガリを取ろうとして箸で容器をかき回す客はいるかもしれない。帰り際に毒物や異物をそっと混入することも可能だ。

 飲食店のテーブルに置いてあるこうした容器には、これほど簡単に異物を混入させることができるのだ。しかも、客が自ら発信しなければ店側に見つかることもないことが、一連の迷惑行為でわかったのだ。まったく無防備だといってよい。幸いにも、今のところ健康被害を訴える客は出ていないので店側への批判はほとんどないが、健康被害が発生していれば事業者側への批判も起きただろう。

ガリやショウガ、タレは使い回し?

 過去には、高級料理店が期限や産地を偽装して販売し摘発されたことがあった。偽装事件で店が潰れることはなかったが、その後に料理の使い回し、つまり食べ残しの料理を再度提供していたことが発覚し営業停止に追い込まれるケースが発生した。高級料理店で、客が残したものを厨房で手直しして別の客に提供していたのだ。健康被害は起きなかったが、店は顧客からそっぽを向かれた。

 使い回しが心配な食材としてパセリがあげられる。料理の添えものとして使われるが、食べ残されることも多い食材だ。「洗ってから使っているから問題ない」と言われても、使い回されていると知らされれば、食べる気はしない人もいるだろう。

 飲食店のテーブルに置かれているガリやショウガ、タレなどは、いったん厨房に下げられていないだけで、客の食べ残しともいえる。「トングが備えてあるから心配ない」と言われても、本当にすべての客がトングを使っているのかはわからない。意図的であろうがなかろうが、飲食店でもっとも異物混入が容易に起きる可能性があるのが、座席に置かれたままの食材だ。今まで行政は目をつぶっていたにすぎない。

 これらは加工食品だ。容器包装された加工食品を販売する場合は、消費期限・賞味期限を表示することが義務付けられており、その期限までは製造者である事業者が保証していることになる。開封後は消費者側の責任となる。もちろん開封後に食べて食中毒が発生しても、事業者側の責任が一切ないとは限らない。

 飲食店に置かれたガリなどは、開封された加工食品である。開封したのは事業者である。しかし、いつ開封したのか、いつ継ぎ足しているのか、あるいは容器の食材がすべてなくなってから新しい食材を入れているのか、容器やトングはいつ殺菌・消毒されているのかといったことは客にはわからない。ほとんどが信頼関係と性善説に基づいている。

 筆者はかつて食品衛生を担当している行政の職員に、飲食店のガリなどについて「なんらかの規制をしなくても大丈夫ですか?」と聞くと、「そこまでは……」という返事が返ってきた。今回の迷惑行為で初めて問題になったわけではない。開封された食材を無防備のままテーブルに置くことが許されているのは、今まで重大な問題が起きておらず、さらに事業者側の負担を考慮してのことだ。顧客が開封された加工食品を置くことを望んでいるかどうかは関係ない。あくまで食の安全確保が最優先される。

 餃子の王将は保健所に相談したというが、相談されれば保健所は「衛生面を考えれば、開封されたタレをテーブルに置くことはお勧めしない」と言うだろう。一連の迷惑行為でもっとも問題なのは、毒物や異物を容易に混入させる手口が広く知られてしまったことだ。消費者も事業者も行政も、迷惑行為を行った人物を批判していればよいということではない。

「餃子の王将は異物(虫)混入であり迷惑行為とは違う」「ガリやショウガは食べ残しではない」といった考え方もあるかもしれないが、外食産業に一番求められているのは食の安全確保である。しかし、食の安全を追求するとキリがない。そこで、外食産業側に委ねられていることが非常に多い。そこに食品ロスの問題も関係してくる。

 健康被害を未然に防ぐのは国の役割だ。一連の迷惑行為を受けて、国は食の安全を確保するために法律を厳しくしなければならない。しかし、そうなると事業者の負担も増え、結果的に価格が高くなることが想定できる。規模が小さい事業者のなかには商売をやめなければならない者も出るかもしれない。事業者が率先して食の安全を確保する仕組みをつくれば、法律で規制しなくても済むかもしれない。大手の事業者になればなるほど、健康被害に直結する事故・事件が発生した場合、被害者の数は多くなる。テーブル上に開封された食品を置く時代ではなくなってきたのではないか。 

(文=Business Journal編集部、協力=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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