あるテレビ番組でタレントが花粉症によく効くとして絶賛していた健康茶「JAMU TEA BLACK(ジャム・ティー・ブラック)」(輸入・販売元:株式会社香塾)に、ステロイド成分が含まれていたことがわかった。飲用していると健康影響が懸念されるとして国民生活センターは12日、消費者へ注意喚起を行うとともに、当該商品を飲用している場合は医療機関を受診するよう呼び掛けている。
発覚したきっかけは、国民生活センターの「医師からの事故情報受付窓口」に寄せられた医師からの連絡だった。4カ月ほど「JAMU TEA」を飲用していた10代の女性患者が、定期の血液検査でACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)などの検査値が低かったため、副腎機能が抑制されていることに医師が気付き、当該商品の飲用をやめてもらったところ検査値が改善したという。
国民生活センターが調査したところ、食品への使用が禁止されているステロイド成分のデキサメタゾンが検出され、「無承認無許可医薬品」に該当するため医薬品医療機器等法に抵触する可能性があるという。また、商品パッケージには
「花粉症の激しい症状が緩和され通常生活が可能な状態になる」
「花粉の飛び交う季節に数日間置きに服用するだけで花粉の季節を過す事が可能になる」
などと医薬品的な効能効果と受け取れる記載があり、同法に抵触する可能性がある。さらに、日本語での原材料表示がないため、食品表示法上、問題となるおそれがあるという。
ステロイドの問題は副作用が強いこと
医師の指導なしで自主判断でステロイド成分を服用するリスクについて、血液内科医で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はいう。
「私は、『花粉症への効果をほのめかした健康茶にステロイドが含有-飲用されている方は、医療機関にご相談を-』 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230412_1.html の報道をみて驚いた。ステロイドという『劇薬』が、医師のチェックのないまま、漫然と利用されていたからだ。ステロイドは、強い抗炎症作用を持つ。花粉症に効くのは当然だ。私も、花粉症の症状が強い患者さんには、短期間に限ってステロイドを処方することがある。
ステロイドの問題は副作用が強いことだ。免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなることが有名だが、それ以外にも糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、肥満、胃潰瘍など、様々な副作用が起こる。ステロイドの副作用は、投与量と投与期間に依存するが、この患者では、すでに何らかの副作用が生じている可能性が高い。その根拠は、担当医が『定期の血液検査にてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)といった検査値が低い』と報告していることだ。これは、健常人では、副腎という臓器で、微量のステロイドホルモンが産生されているが、体外から長期にわたり、ある程度以上の量のステロイドホルモンが投与されたため、自力でのステロイドホルモンの合成を止めていることを意味する。すでに、体には大きな影響がでているのだ。副作用も生じていると考えていい。今後、担当医は、ステロイドの量をゆっくりと減量するだろう。急に止めてしまうと、体内でステロイドホルモンを合成できないため、副腎不全を生じるからだ。血圧が低下し、ときに死亡する。
かくのごとく、ステロイドは経験豊富な医師でも扱いが難しい薬だ。一般人が自主判断で使うべきではない。今回のケースは極めて悪質だ。私は刑事事件として、入手経路や動機なども含めて、きっちりと捜査すべきである」
(文=Business Journal編集部、協力=上昌広/血液内科医、医療ガバナンス研究所理事長)