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焼肉の食べ放題、3千円台&100種類でも店側は利益が出る収益構造…材料費率30%

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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「gettyimages」より

 数千円でバラエティに富んだメニューを好きなだけ食べることができる焼肉チェーンの食べ放題コース。食べ盛りの子どもがいるファミリー層などにとっては、ありがたい存在だが、ユーザー側に大きなメリットがあるということは、裏を返せば店側は損を被っているのではないか。そんな考えが頭をよぎるが、実は店側もちゃんと利益を確保できているケースが多いようだ。では、なぜ低価格で豊富なメニューを揃えても利益を出せているのか。そのカラクリについて探ってみたい。

 焼肉チェーン各社は食べ放題メニューを重要な集客のアイテムに据えている。たとえば、全国に約300店舗を展開する「焼肉きんぐ」は、100分食べ放題の「きんぐコース」(3498円/税込、以下同)、「プレミアムコース」(4378円)、「58品コース」(3058円)を提供。「きんぐコース」には、「焼肉きんぐ 四大名物(東)」の「ハラミステーキ」「壺漬け一本ロース」「きんぐカルビ」「炙りすき焼カルビ」などのほか、牛・豚・鶏の精肉やホルモン類はもちろんのこと、海鮮類やホイル焼き、キムチ類や「鶏唐揚げ」「ひとくちニラチヂミ」「カリッとろたこ焼」「焼肉屋さんの厚切りハムカツ」といった一品料理、サラダ類、スープ類、冷麺、「石焼ビビンバ」や「旨辛カルビクッパ」など100品以上が揃えられている。

 全国に約600店を展開する「牛角」は、「70品食べ放題コース」(3498円)、「牛角90品食べ放題コース」(3938円)、「堪能100品食べ放題コース」(5368円)を提供。「90品食べ放題コース」では、同店自慢の「牛角旨カルビ」「熟成王様カルビ」「ねぎ塩豚カルビ」に加え、「たっぷりお野菜のミニビビンバ」や子供向けの「キッズカレープレート」、「抹茶アイス」や「杏仁豆富 いちごソース」「カットパイナップル」といったスイーツも揃えられている(デザートはいずれか1品)。

 約150店舗を展開する「安楽亭」は、「パワー焼肉コース」(3498円)、「大満足安楽亭コース」(4378円)、「極ゴージャスコース」(8778円)などを提供。「パワー焼肉コース」には、「バーベキューカレーカルビ」「焼きしゃぶカルビ」「特製タッカルビ」のほか、サラダ各種や「ビビンバ」「ナムル盛合わせ」「雪見だいふく」などが揃えられ、さらにソフトドリンク飲み放題もついている。

 そんな大盤振る舞いの各チェーンの食べ放題コースだが、気になるのは「きちんと採算が取れているのか」という点だ。食べ放題コースのみをみれば赤字だが、集客のアイテムに据えることで店側にとってはトータルで収益拡大につながるため提供しているという可能性も考えられるが、カラクリはどうなっているのか。外食チェーン関係者は言う。

「収益構造は各チェーンによってまちまちなので一概にはいえないが、チェーン企業は仕入れる量が大量で、かつ特定の業者から安定的に継続して購入するので、一般の人々が想像する以上に低い金額で仕入れている。また、食べ放題とはいっても一人当たりが食べる量には限界があり、たとえば子ども2人と両親の家族4人分を注文したとして、コスパ的なお得感を感じる割には一人当たりに平均すると『それほど食べていない』という例も少なくない。

 ただ、食べ放題コースだけ見れば、やはり店側にとってはそれほど利幅は大きくないだろう。実は食べ放題を選ぶ客でも、それだけを注文するという客は少ない。特にアルコール類などのドリンクは利幅が大きめで、客も『食べ放題で得しているからドリンクは多めに注文しても平気』というかたちでドリンクに対して財布の紐が緩みやすく、そこで一定程度稼いでいる面はあるだろう」

 自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に聞いた。

食べ放題で採算を取るカギはメニューの種類の多さ

 低価格で食べ放題を提供できる理由としては、大手チェーン店の仕入れ力=大量発注で安く仕入れていることや、セルフサービス的な要素をオペレーションに組み込むことによる人件費低下があげられます。人が一度に食べられる量はある程度決まっています。みなさんが普段食べているランチは平均すると1食350~400gくらいで、ハンバーグやステーキのようなメインになるおかずは150~200gの場合が多く、それに1人前0.5合=炊き上がり約165gのお米や添え物・小鉢、汁物の具材を加えると350~400gになります。パスタの場合も1人前100gの乾麺を茹でて、約2.5倍の重さ250gになり、それに具材やソースが絡んで、やはり350~400gくらいとなります。

 ビュッフェに行くと、せっかくだからとお皿にいっぱい、いろいろなものを乗せたくなりますよね。それをお替りすると、たいがいの人は満腹となります。これでボリュームとしては700g前後ではないでしょうか。ランチ2食分を食べれば、お腹はパンパンです。それ以上食べられる人もいるでしょうし、そんなに食べられない人もいるでしょうが、一般的にランチ2食分を食べれば充分に満足できます。

 では、税込3300円の焼肉食べ放題コースで考えてみます。飲食店の材料費率は30%くらいであり、3000円の3分の1、約1000円以内に材料費を抑えられれば、お店の収益構造上、問題はありません。つまり、人が一食当たりに食べられる量=700g分を1000円の材料費で用意すればいいわけです。100g当たり約143円ですが、スーパーでは肉や野菜がその金額以下で売られていますが、焼肉屋のメインである牛肉は100gを143円で調達するのは難しいです。牛バラ、ひき肉、切り落としなどはそれ以下で買えるかもしれませんが、それだけだと品揃えは寂しくなります。そこで100g143円以下で仕入れられるメニューを豊富にいろいろと用意して、浮いた分で牛肉の高い部位を調達します。

 人は同じものを食べ続けるよりも、いろいろなものを食べる傾向があります。それは回転寿司でも焼肉でも同じです。種類・品数が多くなり、高い牛肉以外を注文するお客が増えれば、材料費は仕入れ価格全体の平均に近くなります。逆に「元をとってやろう」と考えて牛肉の高い部位のみを食べれば、お得にはなりますが、そういうお客は少ないでしょう。なので、お客が無理なく好きなものをいろいろと食べているうちに、お店にとって採算が取れるようになってきます。

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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