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大阪万博、建設費が当初の1.8倍、2300億円に…巨額税金投入で中止論も

文=Business Journal編集部
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大阪・関西万博の会場となる夢洲(ゆめしま)(公式Instagramアカウントより)

 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の建設費用が当初予算の1.8倍にあたる2300億円に増加する見通しであると、24日付日本経済新聞記事が報じている。建設費は国、大阪府・市、経済界が3等分して負担する取り決めになっており、これ以外にも約800億円の運営費、さらに警備費が発生する見込み。予算が当初見積もりから大幅に膨張する経緯は2021年の東京五輪・パラリンピックのときと同様。また、パビリオンをはじめとする施設の大幅な建設遅れも発生し、万博関連の建設が建設業界の人材不足を深刻化させる懸念も指摘されており、巨額の税金を投入する必要性や費用対効果に疑問の声もあがっている。

 大阪での万博開催が決定した18年時点で、日本は誘致にあたり会場建設費を1250億円、国内の経済効果を2兆円、国内外からの来場者数を2800万人と見積もっていた。その後、会場デザインの設計変更により建設費は20年に1850億円に増額。その後、建設資材や人件費の高騰で工事落札金額の当初計画からの上振れが相次ぎ、今回で2度目の増額となる。

「建設遅延が徐々にクローズアップされつつあるが、たとえばパビリオンのタイプAなど、現時点でもまだデザインや設計が白紙のものも多く、超短納期工事になることはめにみえており、作業員の確保も困難で採算が取れないことがわかっている建設会社は、どこも工事を受けたくないというのが本音。入札に声をかけられても高い見積もりを出すので、結果としてさらに全体の建設費が膨らむ。来年には建設業界でも月100時間未満という時間外労働の上限規制が適用される『2024年問題』が迫っており、いくら国や大阪府、万博協会にいわれても、長時間残業が発覚したり、東京五輪での国立競技場建設のときのように過労死事故などが起きれば、建設会社側が世間からバッシングされる恐れもあり、おいそれと応じるわけにはいかない」(ゼネコン関係者)

 特に約60カ国が参加する予定のパビリオン(タイプA)の建設が遅延している。各国・地域が独自にデザイン・設計して建てるもので、現時点でも着工に必要な手続きに着手した国は韓国など数カ国にとどまっているとみられる。これを受け日本国際博覧会協会(万博協会)は8月から、工期が短くて済むプレハブ工法などの建物を建設する「タイプX」を各国に提案しているが、目立った成果は出ていない。

「万博協会はタイプAについて年内に着工すれば開催までに間に合うとしているが、あと3カ月しかなく、その間に60カ国すべてが手続きをすべて完了して建設会社を確保して着工に入るというのは現実的に不可能。建設業界内では『いっそのこと中止すべき』との声も聞かれる。10月中にはある程度の見通しが判明するので、そこで府と万博協会がどう動くのかが焦点となる。一連の遅れは、万博協会の調整力のなさに起因している。万博協会としては『最後は国がなんとかしてくれる』という考えなのかもしれない。東京五輪は世界的な注目度が高い五輪ゆえに、加えてコロナという特殊事情もあり、延期での開催となったが、注目度の低い大阪万博は、もし中止すべしという世論が高まれば、国が『そこまでしてやる必要があるのか』という考えに傾いてもおかしくはない。これまで投下してしまった税金は無駄になるが、トータルでみて無駄な支出を最小限に食い止めるとなれば国・府の財政にとってもよいし、国民の理解も得られやすいのでは」(全国紙記者)

大阪IRの前哨戦

 万博をやる意義にも疑問の声が根強い。

「かつてと違い、各国から政府・企業が一カ所に集まって技術を展示する意義は薄い。今回のメインテーマはAI(人工知能)とVR(仮想現実)だが、万博の開催に照準をあわせて最新技術を発表しようというモチベーションは企業にはない。また、日本国内ですら世間の大阪万博への関心は低調だ」(霞が関官僚)

 だが大阪府には、なんとしても大阪万博を成功させなければならない事情がある。

「府にとって、同じ夢洲(ゆめしま)で行われる大阪万博と、2030年に開業する大阪IRはセット。すでに大阪メトロ中央線の夢洲までの延伸がほぼ決まっているが、大阪万博と大阪IRの2つを発火材として夢洲の再開発を軌道に乗せ、それを軸に大阪全体の経済を活性化させていくプランを描いている。特に大阪IRは初期投資1兆円以上、毎年の売上5000億円以上、来訪者は年2000万人を見込んでおり、もしこれが成功すれば大阪経済への影響は大きい。府としては、そんな大阪IRの前哨戦といえる大阪万博でコケるわけにはいかない」(全国紙記者)

 当サイトは8月16日付記事『大阪万博「労働環境の改善」がテーマ→工事遅延で時間外労働の上限規制除外を要請』で大阪万博の建設工事をめぐる問題点を報じていたが、以下に再掲載する。

――以下、再掲載――

 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の工事について、運営元である日本国際博覧会協会(万博協会)が政府に対し、建設業界への時間外労働の上限規制を適用しないよう要請していると報じられている。過労死弁護団全国連絡会議は3日、「労働者の生命・身体を危険にさらすことを許容することを意味する」として撤回を求める抗議声明を発表。東京オリンピックのメイン会場となった新国立競技場の工事では、現場監督の過労自殺や作業員の労災死亡事故が起きていることもあり、万博協会の行動が議論を呼んでいる。

 大阪万博は再来年の2025年4月から半年間にわたって開催されるが、特に60か国が参加する予定のパビリオン(タイプA)の建設が遅延しており、間に合わない懸念が生じている。パビリオン(タイプA)は各国・地域が独自にデザイン・設計して建てるもので、事前に大阪市から仮設建築物許可を取得する必要があり、昨今の資材費高騰や建設業界の人手不足も重なり、現時点で許可の前段階の基本計画書を提出しているのは1カ国にとどまっている。

 工事の遅れに業を煮やしているのが万博協会だ。建設業界では24年4月に働き方改革関連法に基づき時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満に制限されるが、業界全体が工事現場従事者の長時間労働を前提に回ってきたため、広い範囲で工事遅延などの発生や人手不足の深刻化が懸念されている。いわゆる「2024年問題」だが、万博協会は工事の遅れ解消を目的として、万博の工事にこの上限規制を適用しないよう政府に要請していると伝えられている。

 上限規制には適用外とする特例規定が設けられているものの、「災害その他避けることのできない事由」に該当する場合とされており、加藤勝信厚生労働相が「一般的には単なる業務の繁忙では、認められない」との見解を示しているとおり、万博協会の要請の合理性は低い。

 また、大阪・関西万博はテーマの一つに「労働環境の改善」を謳っており、調達コードとして「長時間労働の禁止 サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、違法な長時間労働(労働時間等に関する規定の適用除外となっている労働者については健康・福祉を害する長時間労働)をさせてはならない」と明記しており、今回の要請は万博の理念に反しているとの指摘もなされている。

<国連の原則・目標にも明白に違反>

 万博協会の動きを受け、過労死弁護団全国連絡会議は今月3日、「大阪・関西万博への労働時間規制の適用除外を求めたことへの抗議声明」を発表。前出の新国立競技場建設での過労死事件を引き合いに出し、<新国立競技場のデザインが変更になる等によって工期がひっ迫し、超長時間労働を行わざるを得なくなることで生じたものであって、現在の大阪・関西万博と全く同様の構造>と指摘。次のように主張している。

<「労働力不足」を理由としてこの適用除外の延長を求めるということはすなわち、上限規制を超えたような時間外労働が発生することを許容し、労働者の生命・身体を危険にさらすことを許容することを意味する>

<今回のような国際的行事において、長時間過重労働を労働者に課すことは、これら国連の原則・目標にも明白に違反するものである。 仮に、博覧会協会が求めるような労働時間規制の適用除外を行わなければ開催できないイベントであるというならば、開催を取りやめるほかはない>

 建設業界関係者はいう。

「大手ゼネコンは今、建設の需給がひっ迫して人手不足の状態であり、日本政府のみならず海外の国がからむ万博のような面倒くさい仕事はやりたくない。なのでパビリオンなんかでも、話が来てもいろいろとできない理由を並べたり、高い見積もり金額を提示して受けないようにしているのかもしれない。もし工事を引き受けて東京五輪のときのように社員の労災事件が起きれば、ゼネコン自身も世間からバッシングを受けるリスクもあり、万博の仕事なんて受ける旨味も理由もないというのが本音だろう」

 また、元ゼネコン社員はいう。

「予算の制約上、大幅に作業人員を増やせない一方、工事全体の作業ボリュームは変わらないので、時間外労働の上限規制があろうがなかろうが、作業員一人当たりの労働時間は変わらない。なので、もし上限規制がかけられれば、今も多くの建設現場で常態化しているように、上限を守っているように見せかけるために社員による残業時間の過少申告が行われるのは目に見えている。もしかしたら万博協会はそうした改ざんの発生を避けて、工事作業員の労働実態の透明化を図ろうとしているのかもしれない。

 東京五輪に伴う新国立競技場建設と同様に、万博も突貫工事となり、現場が錯綜するのは必至なので、新国立競技場建設のときのような過労死事件などが生じてしまう懸念もある。ゼネコンで働く20~30代の現場監督は、万博の仕事のような突貫現場に配属されることは避けたいと考える人も多いはず。上層部は自分や会社の評価につながると考えて受注を取りに行くのでは」

 当サイトは万博協会に見解を問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。

(文=Business Journal編集部)

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