橋下徹氏が大阪市長を降りてまもなく1年。国内の行政関連ニュースは2020年東京五輪絡みの「東京発・小池劇場」ばかりの感のなか、橋下氏の盟友・松井一郎大阪府知事が「夢よ、もう一度」とばかり打ち出したのが万博誘致だ。
11月9日、松井知事は「2025年大阪万博」の基本構想を世耕弘成経済産業大臣に提出した。府が設置していた「2025年万博基本構想検討会議」(座長・秋山弘子東大教授)の意見が根底で、開催期は25年4月から10月、テーマは「人類の健康・長寿への挑戦」。メイン会場は大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)である。松井氏は「東京も2回五輪をやる。大阪も」と鼻息は荒い。
磯村隆文市長(故人)時代に大阪市が誘致に失敗した08年の五輪会場用に埋め立て開発されたのが、人工島「舞洲(まいしま)」だった。北京、トロント、パリ、イスタンブールと並び立候補した大阪市は、01年7月のモスクワでのIOC(国際オリンピック委員会)総会第一回投票で、得票数がたった6票で惨敗する。「北京が強かったから」などと言えたレベルではなかった。
当時、関淳一助役などはほとんど市議会にも出ず、誘致名目で年がら年中、職員らを連れて外遊していた。外遊中の不明朗な支出を市民団体に指摘されると、「町で偶然、IOCの幹部に出会ったので食事して話を聞いた」などと取り繕ったが、そんな証拠はない。無残な結果にも磯村市長、関助役以下、市幹部らはなんの責任も取らなかった。
五輪や万博などの誘致は、負けても責任を取る必要がない。「恐らく勝てない」としてしまっては元も子もないから「うまくやれば誘致できるかも」という幻想を市民にふりまき、御用学者がはじき出す「獲らぬ狸」の経済効果を吹聴し、財界を巻き込む。首長以下、役人や議員らは公費で欧州外遊などを堪能する。記者たちも海外出張できるから反対しない。財団法人のかたちをとった大阪五輪の招致委員会には、ほぼすべての大手マスコミの大阪支社長など幹部が名を連ねていた。
すでに海外視察開始
さて、万博は五輪のような都市立候補ではなく、国が誘致する国家事業であり閣議承認が必要だが、すでに大阪府は菅義偉官房長官からお墨付きを得ている。開催地を決定する博覧会事務局(BIE/本部・仏パリ)は、2016年1月から立候補を受け付けている。強敵は、すでに立候補を表明したパリだという。