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伊藤園、缶入りチゲと冷麺が5~9円で「投げ売り」の理由…味への酷評が続出

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
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伊藤園のHPより

 伊藤園の缶入りスープ「ピリッと旨辛 チゲ風スープ」「飲む ふるる冷麺」がスーパー店頭で5~9円で「投げ売り」されているとして話題を呼んでいる。この2商品をめぐってはSNS上で「あまりの不味さに閉口」「人が飲める代物ではない」などと厳しい声があがっていることから、大量の売れ残った商品が在庫処分のようなかたちで低価格で販売されているのではないかという見方が広まっている。「チゲ風スープ」は昨年10月発売、辛ラーメンで知られる農心ジャパン監修の「ふるる冷麺」は今年4月発売だが、果たしてこれらの新商品2つは「投げ売り」されているのだろうか。業界関係者の意見も交えて追ってみたい。

「お~いお茶」や「1日分の野菜」で知られる伊藤園は、上記2商品以外にも「特濃コーンポタージュ」などの缶スープを取り揃えている。缶コーヒーと同じ185gほどのサイズの容器に入った缶スープはここ数年、飲料メーカー各社が力を入れている商品の一つ。サントリー「ビストロボス コク旨い、粒たっぷりコーンスープ」やキリン「世界のKitchenから 小さなごちそう コーンポタージュ」、アサヒ「コクうま コーンポタージュ」、ポッカサッポロ「じっくりコトコト やさいポタージュ コーン」「同 トマトクリーム」「同 じゃがいも」「同 栗かぼちゃ」などが自動販売機やスーパー店頭に陳列。このほか、acure「コクと旨味の一風堂とんこつラーメンスープ」「気仙沼産ふかひれ使用 ふかひれスープ」「とろ~りまろやかクリームシチュー」、ダイドードリンコ「博多水炊きスープ 雑炊仕立て」「かに鍋スープ 雑炊仕立て」、現在は販売終了となっている「とん汁」(伊藤園)、「じっくりコトコト 飲む缶カレー」(ポッカサッポロ)といった特徴的な商品も登場している。

 流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「エナジードリンクの普及に象徴されるように、手軽にカロリーを採れる飲料へのニーズが高まっている。メーカー側としては清涼飲料水以外の市場を広げるために近年、缶スープに着目している」

 流通業界関係者はいう。

「スープではないがコーヒー缶サイズの『おしるこ』や『甘酒』は地味ながら長きにわたり売られており、一定の需要があった。少し前まではコーンポタージュなどの缶スープは『変わり種』とみられていたが、最近では消費者がこうした商品を買うことに抵抗を感じなくなりつつある。10~20代でも缶入りコンポタなどのスープを好んで買う人が増えている。その理由はよくわからないが、単純に『美味しいから』というのと、『缶入りスープを飲むのは変』という先入観がないためでは。

 飲料メーカーはこれまで缶ビールと缶コーヒーの市場でしのぎを削り、この2ジャンルに多額の開発費と宣伝費を投下してきたが、以前と比べて今の10~30代はこれらを飲む習慣は薄まりつつあり、各社は将来を見据えて『新たな柱』を模索している。そうしたなかで缶スープも注目されている。これまで各社、試行的にさまざまな缶スープを投入してきたが、コンポタなど定番スープに集約しつつあるようだ」

小売店で在庫がダブついている?

 そんななかで発売された伊藤園の「チゲ風スープ」「飲む ふるる冷麺」。特に『ふるる冷麺』は赤いパッケージに「辛」の大きな文字で知られる「辛ラーメン」の農心ジャパンとのコラボとなっているが、2商品についてネット上では次のように厳しい声が続出している。

<タダでも要らない>

<マジでやばい>

<口に含んだ瞬間のヌルッとした感じが食感?として良くない>

<唐辛子というより生姜が強い>

<なんでこれが商品会議に通ったんだ?>

<がんばって半分飲んだけどギブアップです>

 もっとも、

<気に入り思い切って箱買いしました>

<これ全然いけますね。好きですこれ>

<暑い日で少し食欲がなくて昼飯食えなかった午後なんかには便利>

という声もみられ、好みが分かれる商品のようだ。

 では、5~9円という値段で大量に売られている背景について、前出・西川氏はいう。

「食品市場では毎年無数の新商品が発売されているが、そのなかで定番商品として市場に定着するのは、ほんの一握り。メーカーや卸売業者に大量の在庫が余剰してしまい、このようなディスカウントスーパーに安値で買い取ってもらうというルートは昔からある。廃棄処分するにもお金がかかるため『タダでもいいから買い取ってほしい』というケースも珍しくない。今回の伊藤園の2商品は、これだけの低価格で売られているということは、かなり売れ残っているのではないかと考えられる。

 一般的に大手食品メーカーが新商品を発売する際には、企画の段階で入念な市場調査をして、その結果に基づいて商品設計をする。今回の新商品はかなりユニークでニッチを狙ったものだが、コンセプト自体が一般消費者のニーズや嗜好に合わなかったのかもしれない」

 流通業界関係者はいう。

「処分品などの訳アリ商品がディスカウントスーパーで安く売られているが、どんなに安くても通常の店頭価格の概ね4~6割くらいで売られているケースが一般的。税込みで140円くらいのものが5円で売られるというのは、そのレベルの価格じゃないと売れないからであり、『廃棄コストがかかるくらいならタダ同然で売ったほうがロスが少ない』という状況だと思われる。それだけメーカーや卸売り業者で在庫がダブついている、つまり『売れていない』のでは」

 また、別の流通業界関係者はいう。

「味に関して辛辣な声が目立つが、ホットのチゲと冷麺の缶入りスープという発想は悪くないと思うし、100円そこそこの値段で買えて、勝ってすぐに飲めるということを嬉しいと感じる消費者は一定数いるだろう。商品化に際してはメーカー内で何度も試作と試食が繰り返され、多くの食品のプロである担当者が実際に食べた上でゴーサインが出されるので、購入者の大半から酷評を浴びるほど酷い味に仕上がっているとは考えにくい。マイナスの評価だけが悪目立ちしている面はあるだろう」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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