世の中の一般的な店舗は、競合店対策として、すぐに商品の値下げをする。競合店が10円下げれば、こちらも10円下げる。更に競合店が10円下げてきたら、こちらもまた10円下げる……こんな安売り合戦をどこまで続けるのか。これは誰も儲からない負の連鎖になっているとわかっていながらも、一度はまったらそこから抜け出すことができない。
消費者は、値下げ当初は「安い!」と飛びつくが、時間がたつにつれ、その価格に慣れて当たり前になってしまう。つまり商品の価値を下げてしまうことになる。そして、一度下げてしまった価格は、なかなか元には戻せない。もし元の価格に戻せば、誰も振り向きもしない、という状況に陥る恐れがある。体力のある大手ならまだしも、中小店舗が安売り競争に走ると、あとは閉店へ一直戦となりかねない。
●安売り競争への対抗策
『お金をかけずに売上3倍!コメントPOP活用術』(合同フォレスト)の著者で、コメントPOP活用コンサルタントの田中博子氏は、30年間に渡りCD・DVDのレンタルショップを経営してきた中で、安売り競争に陥らないために最も重要視してきたのはPOP、中でもコメント重視の「コメントPOP」であると言っている。
店舗内で、商品の説明や使い方、価値を伝え、購買を促進するツールをPOPという。「コメントPOP」は、通常のPOPより小型で説明文が多め、主にCDショップや書店で見かけることが多い。
田中氏は、2011年レンタル商業組合主催のショップコンテストで548店舗中準グランプリ、12年度も優秀賞を受賞している。受賞の決め手は「『コメントPOP』で埋めつくされた店づくり」だそうだ。
「字がヘタでも、文章が苦手でも、POP文字が書けなくても、『コメントPOP』なら大丈夫です」という。ツイッターに140文字以内で書き込むように「短い文章でも丁寧に書く」という、極めてシンプルなルールで手軽に始められる。
「コメントPOP」は、慌ただしい店の中でも、ちょっとした空き時間で書けるお客とのコミュニケーションツールであり、これはすべての業界に応用できる。文章を書くという点で、応用の幅は広い。重要なのは、お客様目線を忘れてはいけないという点だ。
では、実際にコメントPOPを書くことで、どのような効果があるのか?
「お客が目的の商品を探しやすくなる」
「お客に特売品などを強くアピールできる」
「スタッフにとっても、商品を管理するための便利な目印になる」
「書けば書くほど競合店との差別化につながる」
「売り上げがアップする」
このように、メリットは多い。しかし「POPを書いて」と言っても、多くの人は書きたがらない。理由は「POPなんて書いたことがないから」「字がヘタだから」「文章を書くのが苦手だから」「仕事が増えるだけで給料が上がるわけではないから」「めんどくさい」など。
スタッフに頼んでも、実際にPOPを書いてくれるのは10人中1人か2人だ。田中氏の店でも、最初からスタッフが自主的にPOPを書いてくれたわけではない。なんとかPOPに興味を持たせようと、スタッフをヴィレッジヴァンガードやタワーレコードに連れて行くと、そこはPOPであふれ返っており、少しやる気になったりする。しかし、見よう見まねで書けるものでもない。