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ユニクロ柳井氏、海外雑誌で「日本はアジア諸国に後れている」発言が正しい理由

文=Business Journal編集部、協力=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
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米誌「TIME(タイム)」の公式サイトより

 ユニクロやGUなどを展開するファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏が米誌「TIME(タイム)」(12月4日号)のインタビュー記事で、

「日本人は日本が他のアジア諸国に後れを取っているという現実を受け入れる必要がある」

「日本は先進国ではまったくない」

「日本の従業員の賃金はまだ低い」

「北京や上海の人々は、日本の同等のポジションの人と比べて2~3倍高い給料を得ている」

「日本政府は金利上昇、補助金の削減、抜本的な規制改革など積極的な施策を推進すべきだ」

「日本の政府と官僚は意識を変えるべきだ。なぜなら彼らは何も知らないからだ」

などと大胆な発言を展開し、話題を呼んでいる。これらの柳井氏の認識・提言は的を射たものなのか。専門家の見解を交えて検証してみたい。

 ファストリの業績は好調だ。2023年8月期の連結決算は売上高に当たる売上収益が前期比20%増の2兆7665億円、純利益は8%増の2962億円。国内ユニクロ事業の売上が過去最高になったのに加え、中国、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアなど海外事業も軒並み伸び、海外ユニクロ事業の売上が初めてグループ全体のうち5割を超えた。24年8月期は売上収益が3兆500億円、同社として初めて3兆円を超えると予想。柳井会長は10月12日の会見で、5年後(28年8月期)に売上収益を5兆円に伸ばすという目標について「世界の主要な都市にグローバル旗艦店を出店する現在のやり方で5兆円までの道筋はほぼ見えていて、これを2倍にするだけで、それほど難しくはない」と強気の発言をした。

 現在74歳の柳井氏は5年後には79歳となり、その後継者選びが常に注目の的になっているが、元ファストリ社員はいう。

「柳井氏の2人の息子が取締役に入っているが、2人にトップを継がせる意思は柳井氏にはなく、あくまで自身がいなくなった後の『お目付け役』として取締役に置いているにすぎない。柳井氏は子どもには自分の代わりは務まらないと考えており、そこは冷徹かつ客観的にみている。順当にいけば、9月に柳井氏の後任としてユニクロの社長に就いた塚越大介氏がファストリのトップの有力候補ということになるが、かなり流動的だろう。ただ、柳井氏には、外部ではなく内部の人材を登用したいという思いがあるとみられている」

「日本の最大の欠点は個性がないこと」

 その柳井氏は「タイム」当該号で表紙写真に起用され、“The Founder of Uniqlo Has a Wake-Up Call for Japan”と題するインタビュー記事に登場。上記のほか、

「日本の最大の欠点は個性がないこと」

「日本人は自立すべき」

「もっと世界に足を踏み入れていき、より積極的にならなければ、日本人に未来はない」

と現在の日本に危機感を示している。

 柳井氏が記事内で示した認識について、第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの永濱利廣氏はいう。

「『日本が他のアジア諸国に後れを取っている』のはその通り。すでに一人当たりのGDPを見れば、日本は韓国や台湾に追い抜かれている。日本で高いといわれる台湾積体電路製造(TSMC)の賃金も台湾本土よりは安い。『日本の従業員の賃金は低い。もっと高くていい』もその通り。というのも、労働分配率の国際比較をすれば、日本は欧米に比べて構造的に低水準にある。もっと経済を成長させて労働市場を流動化させることにより、企業が賃上げせざるを得ない状況をつくる必要がある。

『日本政府は金利上昇、補助金の削減、抜本的な規制改革を推進すべき』は間違い。まだ日本は長期停滞局面にあるため、規制緩和は良いが、経済が正常化に至る確信が持てる状況になるまでは利上げも緊縮財政も慎重に対応すべき。『北京や上海の人々は、日本の同等のポジションの人と比べて2~3倍高い給料を得ている』もその通り。マーサージャパンの調査で部長の年収を比較すると、日本はタイより安くなっている」

「独裁的な経営スタイル」の意味

 記事内では、柳井氏の経営スタイルは「独裁者」であり、同氏の死後にファストリは「普通の会社」になると分析する経営コンサルタントの発言も紹介されているが、元ファストリ社員はいう。

「かなり昔のことだが、ファストリがある海外エリアを統括する人材を探していた際に、候補者になった人が柳井さんの独裁的な手法を嫌って辞退したことがあった。柳井さんに独裁的な面があったことは事実であり、部下に高い要求を出しておいて、それを達成しても褒めないという性格も知られている。ただ、ソフトバンクにせよ楽天にせよベンチャーから大企業に成長した企業は、どこも優秀かつ独裁色の強いトップに率いられて成功したという点は共通している。ただ、柳井さんは自分の考えに固執するというタイプではなく、特に外部から新たな気付きを与えられると、それをすぐに取り入れようとする柔軟さも兼ね備えている。

 また、『死後に普通の会社になる』という指摘については、ファストリは現在、グループ全体で6万人の従業員を抱え、世界中に店舗と工場を展開しており、すでに十分『普通の会社』になっている。グローバルに事業を展開する仕組みが確立されているので、柳井さんがいなくなっても大きな影響はないだろう」
(文=Business Journal編集部、協力=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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