アマゾンが翌日配送や無料配送を競争優位に立つ武器とするなら、ウォルマートは4000店を超すリアル店舗を武器とする。リアル店舗とネットの融合、つまりオムニチャネル戦略で、ネットだけのアマゾンに勝つことを考えている。
そして日本では、大手小売グループのセブン&アイ・ホールディングスも、当然ながら同じことを考えている。コンビニ(セブン-イレブン)やスーパー(イトーヨーカドー)、百貨店(そごう・西武)などグループ全社で扱う300万商品をネットで買えるようにする。客は、商品を自宅に届けてもらうこともできるし、最寄りの店舗で受け取る選択をすることもできる。この仕組みを2018年度までに構築するために、1000億円を投資して在庫情報や顧客情報を一元化する予定だ。
●ついで買いを生む「O2O」
なぜ、リアル店舗が強みになるのか? ウォルマートはO2O(Online to Offline)、つまりオンラインからオフラインの仕組みを全店舗に拡大する前に、2年間のテストをしている。そのとき、オンライン(ネット)で注文した客のうち、店舗での商品受け取りを選択した客の60%が、来店した時に平均60ドルの付加購買をしている事実を発見した。ネットで買う時とは違い、店舗を訪問すると、いろいろなものが目に入ってくる。買う気はなかったのに、自分の好きな色のジャケットが目に入ってくる。前から買いたいと思っていた椅子が目に入ってくる。ついつい、「ついで買い」をしてしまう。
店舗に商品を受け取りに来る客の中には、ちょっと迷っていて、実物を確認してから購買決定をしたいと思っている客もいる。だからウォルマートは、ネットで注文しても支払いは店舗でOKというシステムも提供している。実際に、実物を見たら、やっぱりサイズが合わないとか色がしっくりこないということがある。そこで、店員が他のサイズや色を奨める。が、奨めた商品アイテムの在庫がなかったら? ここで、登場するのがO2O2O(オンラインからオフライン、そしてまたオンライン)だ。その場で、店員がもっているタブレット型PC、あるいは客がもっているスマートフォン(スマホ)で、他店舗やネット上で在庫があるかどうかチェックできる。在庫があれば、その商品を自宅へ届けるように注文する。
ウェブサイト、モバイル端末サイト、店舗、カタログ、TV、ラジオ、ダイレクトメール、その他、消費者は、いつどのチャネルを使ってアクセスしてくるかわからない。どのチャネルを利用しようとも、顧客が同じショッピング体験ができるようにするためには、顧客情報と在庫情報をリアルタイムでどのチャネルも共有できるシステムが必要だ。
小売業者はこのオムニチャネル戦略が、アマゾンのようなネット専業に勝つ手段だと考えている。アマゾンが無料配送や翌日配送を可能(コスト効率良く可能)にするためには、物流センター構築が必須。日本でも、アマゾンはもうすでに9カ所に物流センターを開設している。ちなみに楽天が2013年時点で3カ所だ。
●物流センター=コンビニ店舗?
セブン&アイでは、この物流センターに相当するのが、国内にすでに1万6000店舗あるセブン-イレブンの店舗だ。セブン-イレブンの店舗を商品受取拠点として考えているセブン&アイは、今後も積極的に店舗を増やしていく予定で、2014年には過去最高の1600店舗を、15年にはさらに出店を加速するつもりだ。