横浜市営バスが367本の運行を減らしたことで、“日常の足”として利用していた客たちに大きな影響が出ている。公共交通機関であるバスの減便は、社会に大きな影響を与えることになるが、なぜここまで大幅な減便をしなければならなくなったのだろうか。
神奈川県横浜市の市営バスが4月、二度にわたって減便を行い、利用客から悲鳴にも似た声があがっている。そこでBusiness Journal編集部は、横浜市営バスを運行する横浜市交通局に話を聞いた。
――367本もの減便を行うことになった理由を聞かせてください。
横浜市交通局「第一の要因は、今年4月1日の法改正で残業規制、いわゆる“2024年問題”が始まったことです。慢性的な人手不足の状況で、各運転手の残業によってやりくりしていましたが、残業に上限が設けられたことで、減便は避けられなくなりました。そのため、全体の3%にあたる290便を4月から減らすことは、かねて計画しておりました。しかし、10営業所のひとつである保土ヶ谷営業所で、昨年末から3月末までに9名の運転士が退職し、運行本数を維持することができなくなり、追加で77本の減便をすることになりました」
――保土ヶ谷営業所といえば、浅間町営業所、滝頭営業所と並ぶ横浜市営バスの主要営業所ですが、なぜいきなり9名もの退職者が出たのでしょうか。
横浜市交通局「退職の事情はそれぞれですが、より待遇の良い仕事へと転職された方が多いようです」
――バス事業者は全国的にほとんど赤字といわれており、給与を上げることは難しいとは思いますが、横浜市営バスでは待遇改善などは行っているのでしょうか。
横浜市交通局「他社も同様かと思いますが、そもそもバスの運転士は残業を前提とした給与で基本給が低かったため、残業規制が実施されたことで手取り額が減っています。そこで、給与のベースアップを行い、さらに住居手当を増額するなどの待遇改善をしていますが、365日、早朝から深夜まで運行しなければならない“キツイ仕事”というイメージがあり、なかなか求人への応募は多くありません」
――そもそも、横浜市営バスの運転士の採用枠はどのくらいあるのでしょうか。
横浜交通局「特に採用枠は設けておりません。人手不足なので、可能な限り多く採用したいというのが本音です。手元にある資料(3月中旬時点)によると、令和5年度は運転士の退職者が60名に対し、新規採用できたのが26名で、人手不足に拍車がかかりました。今年は待遇改善に加えて採用条件を緩和し、採用を強化しています」
国内最大の政令指定都市である横浜市は、約377万人の人口(5月1日時点)を抱え、バス利用者は1日約90万人もいるといわれる。民間事業者との競合もあるが、需要は高く、公営バスとしては営業成績が悪いほうではない。それでも、赤字を前提に予算を組まなければならないほど業績は芳しくない。しかも、「市営バス」と名がついてはいるが、現在は横浜市から補助金などの投入はない。市民にとって重要なライフラインであるバスを持続させるためにも、横浜市は経営への再関与を検討する必要があるのかもしれない。
なお、横浜交通局では、5月31日まで乗務員を募集中だ。採用条件の緩和と待遇改善などの効果もあってか、すでに全国から応募があるという。第一次選考は自宅のパソコンでも受検できるので、気になる方は申し込んでみてはいかがだろうか。
(文=Business Journal編集部)