大手総合家電メーカーのパナソニックが6月20日に発売するカメラの宣伝サイトで、画像素材サイトから購入した写真を、同製品で撮ったかのように見える宣伝をしていた問題に関し、パナソニックホールディングスの宮部義幸副社長「(広告制作者の)想像力が欠如していた」「反省していると思う」と述べた。だが、これがかえって批判の種になっている。企業の危機管理の専門家は、この副社長の発言も「想像力が欠如している」と指摘する。
事の発端は、パナソニックが5月23日、同社の展開するデジタルカメラブランド「LUMIX」から、6月20日にミラーレス一眼カメラ「DC-S9」を発売すると発表した際に起こった。
パナソニックの公式ホームページでは、「DC-S9」の製品紹介や発売記念キャンペーンのお知らせを掲載し、各製品の性能や機能を写真付きで説明していた。だがSNS上で、この説明に使われている画像が、発売される「DC-S9」で撮影したものではなく、有料画像素材サイトで販売しているものではないか、との指摘が上がり、批判の声が噴出。騒動を受けて、パナソニックは素材サイトからの購入を認め、謝罪文を出した。
だが、この謝罪文がさらなる批判を招いた。謝罪文では、「商品WEBサイトで機能やシーンを紹介する画像においてストックフォトサービスから利用許諾を得た画像を部分的に利用しておりました」と事実関係を認めつつ、「クリエイティブを生み出すカメラの商品ページとしてふさわしいかの検討が不十分であったことに加えて、新製品で撮影した写真ではないことへの注釈がお客様にとって、分かりにくい内容と場所での表記となっておりました」と釈明している。
危機管理・広報コンサルタントの平能哲也氏は、「検討が不十分であった」との釈明に、「サイトを見た人が、新製品デジカメで撮ったものと思うに違いない」という、簡単に予測できることを予測できていないことを問題視。また、「注釈がお客様にとって、分かりにくい内容と場所での表記」との記述について、サイトの一番下に小さい文字で『画像・イラストは、効果を説明するためのイメージです』と記述されているだけであるにもかかわらず、まるでお客側にも注釈を読んでいないことの非があるかのようにも受け取れる表現をしているとして、謝罪文の稚拙さを指摘する。
さらに、謝罪文に年月日や社名などが入っていないことを挙げ、極めて異例で企業の外部向け文書の基本がなっていないと疑問視する。謝罪文全体が「曖昧で抽象的、責任の所在を明確にしていない」と厳しく断じる。
副社長「担当者は十分、反省していると思う」
その騒動も冷めやらぬなか、宮部副社長は6月14日に関西経済同友会の定例会見で騒動について触れ、「何かの権利を侵したということではなく、嘘を書いているわけではない」と理解を求めた。続けて「カメラのカタログの写真なので、どう考えても、(サイトを見た人は)そのカメラで撮ったと思うだろう。そうした想像力が欠如していたのではないか」として、一定の非があることを認めつつ、「担当者は十分、反省していると思う」と関係者を慮った。
さらに、自身も以前は社内で同様の担当をしていたことから「私が答える立場ではないが」と前置きしながらも、「(担当者には)しっかりと気合を入れてもらう」と話した。
だが、この宮部氏の発言が「他人事すぎる」として火に油を注ぐ結果になっている。危機管理の専門家は、宮部氏の発言を疑問視する。
「騒動を起こした場合、企業経営者は平身低頭謝罪に徹するのが常道です。しかし『担当者は十分、反省していると思う』などと、部下に責任を押し付けて自分には責任がないかのような発言は絶対にしてはなりません。また、具体的な再発防止策を発表していないなかで、『気合を入れてもらう』との表現も、気合が欠如しているから問題が起きたかのように取れます。担当者のことを『想像力が欠如していた』と批判していますが、宮部氏自身のほうが想像力が欠如していると言わざるを得ません」
図らずも、経営陣の危機管理意識が薄く、トラブルを予測する想像力が欠如していることが露呈した格好だ。発端となった騒動も、起こるべくして起きたといえるかもしれない。
(文=Business Journal編集部、協力=平能哲也/危機管理・広報コンサルタント)