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〔銀行レーダー〕MUFG、銀証連携つまずき=法令順守置き去り、規制緩和に冷や水

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 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行と系列証券2社が、顧客企業の非公開情報を無断共有していたなどとして金融庁から業務改善命令を受けた。銀証連携ビジネスを推進し、さらなる規制緩和も訴えておきながら、コンプライアンス(法令順守)の徹底が置き去りにされていたことが露呈。日本を代表する総合金融グループとしての信頼が揺らぎ、今後の銀証規制緩和の議論に自ら冷や水を浴びせた。国内外での「金利のある世界」復活を追い風に空前の好業績を謳歌(おうか)していたMUFGだが、思わぬ形でつまずいた格好だ。

◇崩れた「攻守のバランス」
 「グループとして銀証の一体運営を積極的に進めてきたが、攻めと守りのバランスが崩れつつあることを経営として意識できなかった」。MUFGが経営陣の報酬減額処分と再発防止策を発表した19日の記者会見で、三菱UFJ銀の半沢淳一頭取は、法令順守意識が希薄になっていたことを認めた。

 MUFGは2010年に米金融大手モルガン・スタンレーと共同設立した三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券の2社を軸に証券事業を拡大。グループ内の銀行、信託などとの一体運営も強化してきた。証券2社は、純営業収益の合計で独立系の野村証券に次ぐ国内2位(23年3月期)にまで成長。昨夏には米モルガンとの新たな提携策を発表し、収益トップ奪取を目標に掲げるなど「攻め」の戦略を展開している最中だった。

 しかし、先月出された今回の業務改善命令では、こうした戦略のひずみがあらわとなった。金融庁は、三菱UFJ銀と証券2社との間で、顧客企業の同意を得ずに株式売り出しなどの非公開情報を共有した「銀証ファイアウオール(FW)規制」違反が21~23年に少なくとも10件の情報であったと認定。株式や債券発行の引き受けに関する交渉や勧誘など、銀行に禁じられた営業行為も23年までに28回あったとされた。

 中には、顧客企業が証券への情報提供を再三禁止したにもかかわらず、銀行の専務執行役員が証券側に情報を伝達した悪質なケースも。三毛兼承頭取(当時)は不適切な可能性を認識しながら適切な措置を取らなかったとされ、経営陣の直接関与も明らかになった。金融庁は一連の不正について「(法令順守より)案件獲得という利益を優先した」などと厳しく指摘した。

◇業績影響は「数十億円」

 信頼回復が急務となる中、MUFGは再発防止策として、人工知能(AI)を活用した銀証間の通話録音やメールの監視強化、法令順守の研修、情報共有に関する社内ルールの明確化などを打ち出した。一方で亀沢宏規社長は「銀行、信託、証券での一体的なサービスが欲しいという(顧客の)ニーズは非常にたくさんある」と説明。「銀証連携の戦略自体は変わらない」と強調する。

 ただ、思惑通りに進むかは不透明だ。今回の不正を受け、証券業務で企業や自治体から起債の主幹事を外されるといった動きが続出。現状では「数十億円ぐらい」(亀沢氏)と一定の業績への影響も見込まれる。再発防止策については「通話まで監視すると業務にならないのではないか」(別の大手行幹部)と過剰視する見方もあり、銀証連携ビジネスの停滞を招く恐れも拭えない。今期2年連続の最高益更新となる連結純利益1兆5000億円を目指す同社には、少なからず痛手となりそうだ。

◇厳罰化求める声も

 今後の規制緩和議論への影響も不可避だ。FW規制は、銀行による「優越的地位の乱用」を防ぐため、1993年の銀証相互参入解禁と同時に導入された。これはメインバンクによる企業への影響力が強かった日本独自の規制で、こうした情報共有の制限は米欧にはないものだ。

 このため銀行界はかねて、米欧勢との公平な競争条件確保の必要性を唱えて規制見直しを要求。これに応じて段階的に緩和されてきた経緯がある。22年には、上場企業に限って一定条件下で情報共有の事前同意が不要となり、次は中小企業や個人にも緩和対象を広げるかが焦点となっている。

 ただ、メガバンクが絡むFW規制違反は、22年に行政処分を受けたSMBC日興証券と三井住友銀行との間の案件に続くもの。今回も「乱用」は認定されなかったとはいえ、銀行系グループの勢力拡大を警戒し規制緩和に抵抗してきた証券界からの反発は強い。日本証券業協会の森田敏夫会長(野村証券出身)は「より明確なルールを示すことも必要では」と規制の厳格化を主張する。

 米国ではFW規制がない半面、銀行は顧客と個別に守秘義務契約を結び、違反すれば多額の賠償を請求されるリスクがあるため「抑止力」として働いている。日本の場合、違反しても行政処分にとどまることもあり、「罰則をもっと強くすべきだ」(巽大介光世証券社長)との声も上がる。

 これに対し、全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀頭取)は今月18日の会見で、国が掲げる「資産運用立国」の実現に向け、「中堅・中小企業にも個人にも、隅々まで証券サービスを提供することが重要だ」と力説。「引き続き緩和を求める」と明言した。

 法令順守は大前提ながら、銀証間や国内外間の顧客の橋渡しが制約されることで利便性低下を招き、「規制自体が弊害を生んでいる」(銀行関係者)との思いは業界内に根強い。

 政府は6月に決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に「銀証FW規制の在り方について検討を行う」と明記した。顧客ニーズが多様化しグローバル競争も進む中、検討に際しては実態に即した適切な規制のバランスをどう取るかが問われる。(経済部・岩田馨)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/07/25-14:53)

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