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西武池袋が常識破り、デパ地下の食品売り場を地上7階に移動…意外な効果?

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
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西武池袋本店の公式Xアカウントより

 西武池袋本店が地下階の食品売り場を地上7階に移動させたことが注目されている。「デパ地下」という言葉があるように、百貨店の食品売り場といえば地下階にあるというのが常識だが、なぜ地下階と決まっているのか。また、上層階で食品売り場を営業するというスタイルは今後、広まっていくと考えられるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 ここ2年ほど、西武池袋本店の経営は混乱が続いてきた。2022年に「そごう・西武」を傘下に収めていたセブン&アイ・ホールディングス(HD)が「そごう・西武」を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに譲渡することを決定。当初は昨年2月に売却する予定だったが、雇用維持の不透明さを訴え反対する労組や西武池袋の改装案への地元からの反発などをセブン&アイHDは考慮して、売却を延期。労組は売却の中止を求めて昨年8月に西武池袋のストを決行したが、昨年9月に売却された。

 西武池袋はほぼ半分の面積にヨドバシカメラが入居するかたちに改装中であり、それに伴い今月から地下1階にあった食品売り場が地上7階に移転して営業している。改装開業後は地下1~2階に戻る予定だが、食品売り場が地上階、しかも上層階に移ることでどのような効果が生じるのかが、小売業界関係者の間では注目されている。

「デパ地下」が常識となっている理由

 そもそも、なぜ百貨店では「デパ地下」が常識となっているのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「実務的な理由としては、食品売り場には水回りの施設などが必要なため、上のフロアにすると水漏れリスクなども生じますし、商品搬入の頻度・量が多いため、地下1階のほうが何かと都合が良く、逆に上層階だと運営上の支障が生じてきます。

 集客面では、特に駅直結の百貨店の場合、改札口を出てすぐにアクセスできる場所に消費者の利用頻度が多い食品売り場を置いて集客し、上の階に客を回していく噴水効果が期待できます。ちなみに一般的に百貨店は地下が食品、1階が化粧品、2階から複数フロアがレディースファッションというフロア構成になっていますが、これは百貨店の主要ターゲット客が女性であることを意識しているためです」

 常識に反して食品売り場を上層階に設置するメリットは考えられるか。

「食品売り場目当てで来店した客が、エスカレーターで降りる途中で“ちょっと興味が湧いたから”ということで別のフロアに立ち寄って購入につながるという逆噴水効果が見込めるかもしれません。

 ただ、お客からすれば百貨店の入口から食品売り場が遠くなって利便性が悪くなるので、『だったら自宅近くのスーパーで済ませよう』となって販売機会のロスにつながるデメリットのほうが大きいのではないでしょうか」(西川氏)

 上層階での食品売り場営業という取り組みが、今後、別の百貨店でも広まっていく可能性はあるのか。大手小売チェーン関係者はいう。

「広まっていく可能性はないと思います。基本的に食品という商材は、消費者側からすると“ぱっと買って、すぐに帰りたい”という購買行動の傾向が強いので、タイパ重視の今の消費者がわざわざエスカレーターに乗って上の階にまで食品を買いに行くとは考えにくい。また、ファッション品や高価格帯の食器などを購入するお客は、じっくりと時間をかけて選びたいので、食品売り場のお客とは少し購買行動が異なる。よって、上層階で食品を買ったお客が下に降りる途中で別のものを買うというシャワー効果は、あまり見込めないのではないでしょうか」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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