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風評に課題、輸出回復は不透明=処理水で禁輸、4カ国・地域が導入

記事提供元=時事通信社
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処理水放出に伴い輸入停止措置を実施した国・地域

 日中両政府が中国による日本産水産物の禁輸措置を段階的に緩和することで合意した。政府と東京電力が昨年8月に東電福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を始めたことを受け、日本の水産物などを対象に輸入停止措置を導入したのは、中国、香港、マカオ、ロシアの4カ国・地域。禁輸措置で広がった風評被害の抑制には、安全な放出作業の継続と禁輸措置の完全撤廃が課題となる。

「解除に向けた入り口にすぎない」。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は20日に発表した談話で今回の合意を「一定の前進」と評価した上で、「早急な解除に全力を挙げてほしい」と政府に要望した。

 日本側は、放出の監視に国際原子力機関(IAEA)の協力を仰ぎ、「科学的な安全性」を国際機関に確認してもらうことで、中国に禁輸措置の即時撤廃を要請してきた。これに対し、中国側は「国際的な監視制度を作るべきだ」と主張。今回、中国も参加する形でIAEAによる監視の枠組みを拡充することで、双方の主張に配慮しながら折り合った。昨年11月の日中首脳会談では「協議と対話を通じて問題を解決する」方向で一致しており、岸田政権の退陣前に解決の道筋を付ける形となった。

 ただ、これで日本から中国への水産物輸出が回復するかどうかは不透明だ。日本の「農林水産物・食品」の輸出額は2023年に1兆4541億円と11年連続で過去最高を更新した。全体としては好調だが、このうち2300億円超と最大の輸出先だった中国向けは、禁輸の影響で22年と比べ減少した。

 政府は中国の禁輸措置導入後、撤廃を働き掛ける一方、対中輸出の主力品目だったホタテの輸出先を中国以外に広げる動きを推進。輸出の脱中国は始まっている。

 政府は食品輸出を25年に2兆円、30年に5兆円に拡大する目標だ。中国の禁輸緩和で輸出を阻害するハードルは低下していく見通しだが、禁輸措置で傷つけられたイメージの回復は容易ではない。 

◇原発処理水放出を巡る動き
2011年 3月 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故発生
  15年 8月 政府と東電が処理水について福島県漁連に「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束
  21年 4月 菅政権(当時)、2年後をめどに海洋放出を開始する基本方針決定
  23年 1月 岸田政権、放出を「春から夏ごろ」と決定
      7月 IAEA、放出は「国際的な安全基準に合致」との包括報告書公表
         原子力規制委員会が放出設備の使用前検査で合格証
      8月 岸田首相が全漁連との会談で漁業継続に「国が全責任」と表明
         24日に海洋放出開始、直後に中国が日本産水産物の全面禁輸発表
      9月 政府が総額1007億円の水産業支援パッケージ発表
     10月 ロシアが日本産水産物の輸入停止
         IAEAが処理水放出の検証開始
     11月 岸田首相、中国の習近平国家主席との会談で禁輸の即時撤廃要求
  24年 1月 IAEA、放出が国際的な安全基準に合致しているとの検証結果公表
      7月 IAEA、2回目の検証でも安全基準に合致との報告書
         日中外相が処理水を巡る協議の加速で一致
      9月 日中が処理水監視の拡充後に禁輸措置を緩和することで合意
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/09/20-21:16)

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