モスバーガーなどのファストフードチェーンやファミリーマートなどのコンビニエンスストアチェーンでは、卵ではなく「卵加工品」「卵黄加工品」「半熟卵風商品」などが使用されている商品があるという話題が一部で注目されている。このような加工品は具体的にはどのような食材なのか。また、健康への影響を懸念する声もみられるが、実際にはどうなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
現在、ファストフードチェーン各社は“月見バーガー”商戦を繰り広げている。例えばマクドナルドは「月見バーガー」(440円/税込/店舗によって異なる/以下同)、モスバーガーは「月見フォカッチャ」(580円)、ケンタッキーフライドチキン(KFC)は「とろ~り月見チーズフィレバーガー」(540円)、ロッテリアは「和風半熟月見 絶品チーズバーガー」(590円)を販売中。
これらの商品に共通しているのは「月見」を演出するために卵が使用されている点だが、マクドナルドは「卵」、KFCは「目玉焼き風オムレツ」を使用している一方、モスバーガーとロッテリアは「半熟風たまご」という加工品を使用している。
広く使用されている卵の加工品や卵風食品
卵の代わりに加工品が使用されているのはファストフードチェーンばかりではない。例えばコンビニチェーンのファミリーマートで現在販売されている「【背徳のコンビニ飯】チーズに溺れる濃厚カルボナーラ風ライス」は中央に黄色い卵の黄身が乗せられているが、原材料名表示欄には「卵黄加工品」と記されている。ローソンで販売中の「ソースたっぷり カルボナーラ」は表面が薄い白身の皮で包まれた黄身が乗せられているが、原材料は「卵加工品」となっている。
卵の加工品や卵風食品は外食店や小売店で広く使用されており、業務用商品が販売されており一般の消費者も購入が可能。たとえばキューピーは冷凍食品「スノーマン ハーフたまご 半熟風 20g×15個入」を販売しており、通販サイト「Amazon.co.jp」では4パックセットで2065円で販売されている。原材料は以下となっている。
<液卵(国内製造)、植物油脂、還元水あめ、油脂加工品、乾燥卵白、デキストリン、食塩、ゼラチン、しょうゆ、こんぶだし/加工でん粉、トレハロース、増粘剤(アルギン酸ナトリウム、増粘多糖類)、ピロリン酸ナトリウム、調味料(アミノ酸)、pH調整剤、カロチノイド色素、(一部に卵・乳成分・大豆・ゼラチンを含む)>
こうした加工品はどのような食品なのか。実践女子大学名誉教授で薬学博士の西島基弘氏はいう。
「加工卵は、液卵や凍結卵など食品工業や外食産業で使用する鶏卵の一次加工品をさします。卵黄加工品は、割卵して冷凍・冷却・乾燥などの加工をしたものです。種類としては、冷凍・冷却・乾燥の全卵、卵黄、卵白があり、これらに加糖、加塩を行ったもの、濃縮処理を行って物性や風味を改良したものなどもあります。半熟卵風商品は、キューピーが開発したといわれています。卵を茹でるとき、水から茹でると時間の経過とともに硬さが違ってきます。それをキューピーがマヨネーズをつくるときに応用しています」
卵加工品の長所
卵そのものではなく加工品を使用することに、健康への影響を懸念する声もみられるが、西島氏はいう。
「いずれも安全性には問題ありません」
食品メーカー社員はいう。
「食品添加物は国が安全性を確認して法律で使用してよいと認めたものなので、危険どころかむしろ安全といえます。加工食品も原材料名がきちんと表示されている食品であれば、メーカーが安全性を確認しているから使用していると考えてよいです。添加物を使用していないことを強調する食品もありますが、たとえば防腐剤が使用されていない場合、一定時間、冷蔵庫や冷蔵ケースの外に置かれたままの状態が続くと目や鼻で知覚できない腐敗が進み、食中毒のリスクが生じます。子どもや高齢者は食中毒で死亡するリスクもあります。食品添加物を使用するということは、そうしたリスクを低減する目的もあります」
小売チェーン関係者はいう。
「昨年に鳥インフルエンザの流行で全国的に卵が不足して品切れや価格高騰が生じましたが、卵加工品には供給が安定しているという長所があります。たとえば昨年の卵不足の際には卵を使うマクドナルドの『てりたまバーガー』で販売停止が生じましたが、卵加工品を使うモスバーガーの『とろったまチーズテリヤキバーガー』ではそのような現象は起きませんでした。
どのような食材を使用するのかというのは、各チェーンの“こだわり”やポリシー、原材料調達コストにもかかわってきますし、商品のレシピとして加工品を使用したほうが美味しくなることもあるでしょうし、加工品を使うことで価格低減につながればお客さんにとってもメリットがあるということになります。なので、卵と加工品のどちらを使うほうが良いのかというのは、一概にはいえないでしょう」
(文=Business Journal編集部、西島基弘/実践女子大学名誉教授)