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玄関開けたら目の前に便器…独房マンションがアリな理由、早稲田駅から徒歩5分

文=Business Journal編集部、協力=榊淳司/住宅ジャーナリスト
デザイナーズマンション
奇抜な間取りのデザイナーズマンション

 玄関のドアを開けたらすぐ横にトイレの便器……。そんな奇抜なマンションがある。インターネット上では、「住めるトイレ」「まるで独房」と面白がる声が続出。“デザイナーズマンション”と銘打ち、おしゃれな外観や内装が一目を引くが、実際に住みやすいかどうかは未知数だ。このようなマンションは、どれほど需要があるのだろうか。専門家に聞いた。

“デザイナーズマンション”との触れ込みで、外観はオシャレでスタイリッシュ。場所は東京・新宿区で最寄りの東京メトロ早稲田駅から徒歩5分。居室はやや狭いが、キッチンもトイレもシャワーもある。ドラム式洗濯機やエアコンも付属しており、すぐにでも生活を始められそうだ。だが、問題はトイレの場所。玄関ドアのすぐ横に便器が置いてあるのだ。トイレが個室になっておらず、居住空間からつながっている。そのため、ネット上では「住めるトイレ」「まるで独房」などと面白がる声が続出している。この物件はすでに借り手がついているようだが、奇抜なデザイナーズマンションは全国各地に存在する。

 玄関のドアを開けたら正面にむき出しの便器、トイレの前にキッチン、トイレに入るために一度外に出なければならない部屋など、住むには不便なのではないかと思うような奇抜な間取りのマンションが、住宅情報サイトでは散見される。周辺相場に比べて大幅に家賃が安ければ借り手もあるのかもしれないが、特別安くもないのは、おしゃれな外観と“デザイナーズマンション”というブランドのためなのか。だが、実際にデザイナーズマンションはどれほど需要があるのだろうか。

そもそもデザイナーズマンションとは何か

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独特な間取りのデザイナーズマンション

 住宅ジャーナリストの榊淳司氏に、デザイナーズマンションについて話を聞いた。

「デザイナーズマンションとは何か、という定義はありません。冒頭のネットで話題になった物件で、トイレを囲っていないという奇抜さは、単にスペースがないところを工夫したというだけだと思います。狭い空間を有効に使うためにトイレの壁をなくした、ということでしょう。最初から意図したデザインで玄関脇にトイレを配置したわけではないと考えられます。友人などを呼ばないのであれば、住む分には特に問題ないのかもしれません」

 奇抜な間取りは、利便性ではなく、狭いスペースを有効活用するための苦肉の策というわけだ。“デザイナーズマンション”と名がついていると、割高なイメージだが、実際はどうなのだろうか。

「個人的には、デザイナーズマンションも相場の家賃と変わりないと思います。普通のマンションは1Rが25平米ほどですが、たとえば25平米10万円のエリアで20平米しかないマンションだとして、トイレなどの間取りを工夫することで25平米の部屋と同じ程度の空間を確保し、10万円の家賃とするという感じなのではないでしょうか。デザイナーがデザインしているからといって高い家賃を払う方は、あまりいないんじゃないでしょうか。家賃はとてもシビアに見られます。そして家賃相場は駅ごとに平米単価が決まっているので、それより高いと借り手がつきません。相場から1割違えば借り手がつかないといわれているので、デザイナーズだからといって、極端に割高になるということはあまりないはずです」

 不動産の専門家からみて、面白い物件というのはどんなものがあるだろうか。

「デザイナーズマンションは数多く見てきましたが、とても奇抜です。たとえば、市川團十郎さんが渋谷に保有していた家が売れない、という相談を受けたことがあります。リビングの真ん中にジャグジーがあったりして、とても変わった間取りでした。しかし、特殊な間取りの家はなかなか売れません。変わった間取りが好きな方はいますが、多くの方には受けません。そのため、安い賃貸物件を工夫して相場の家賃で貸し出す、というケースが多いかと思います。

 私は分譲が専門ですが、分譲は新築でも中古でもオーソドックスが売りやすいです。将来売ることを考えずに終の棲家にするのであれば奇抜でもいいと思いますが、いずれ売ることを考慮すればオーソドックスな間取りに落ち着きます。

『東京R不動産』という不動産サイトは、ちょっと変わった物件を多く取り扱っています。そこの方が、あるインタビューで『賃貸は一人、気に入ってくれる人がいればいい』と話していました。デザイナーズマンションは、そのような観点でつくられているのだと思います」

 ニッチな市場を狙った物件がデザイナーズマンションであって、多くの方に受け入れられるものではないというのが実際のところなのだろう。言い換えれば、仲介業者泣かせなのかもしれない。

「不動産業者にしてみれば、数人に紹介すれば借り手が決まるようなオーソドックスな間取りが扱いやすいです。デザイナーズマンションのような奇抜な物件は、何十人、時には百人以上紹介しないと借り手がつかない可能性があります。しかし、それでも一定の需要はあるので、なくなることはないでしょう」

 あくまでも借り手の感性にはまれば奇抜な間取りも“良い物件”となるのであって、デザイナーズマンションだからメリットやデメリットがある、というものではないのだ。

(文=Business Journal編集部、協力=榊淳司/住宅ジャーナリスト)

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

不動産ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰。1962年京都市生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。主に首都圏のマンション市場に関する様々な分析や情報を発信。
東京23内、川崎市、大阪市等の新築マンションの資産価値評価を有料レポートとしてエンドユーザー向けに提供。
2013年4月より夕刊フジにコラム「マンション業界の秘密」を掲載中。その他経済誌、週刊誌、新聞等にマンション市場に関するコメント掲載多数。
主な著書に「2025年東京不動産大暴落(イースト新書)※現在8刷」、「マンション格差(講談社現代新書)※現在5刷」、「マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)※増刷」等。
「たけしのテレビタックル」「羽鳥慎一モーニングショー」などテレビ、ラジオの出演多数。早稲田大学オープンカレッジ講師。
榊淳司オフィシャルサイト

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