ミスタードーナツ、脱ドーナツ加速?台湾ゴハン祭りに「何屋さんか分からない」

ミスタードーナツの店舗

 ドーナツチェーンである「ミスタードーナツ」が、商品ラインアップとしてドーナツを含まない「ミスタードーナツ 台湾ゴハン祭り」を10月2日から展開すると発表。これを受け一部ネット上では「もう何屋さんか分からなくなる」「ミスドで普通の飯食べようとなる?」「ミスドの飲茶割と美味い」などと話題を呼んでいる。果たしてミスドは「脱ドーナツ」の方向へ進もうとしているのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 日本全国に約1000店舗を展開するミスタードーナツは、国内の店舗数ベースでは2位クリスピー・クリーム・ドーナツ(約70店)を大きく上回る業界1位。「ポン・デ・リング」「フレンチクルーラー」「エンゼルフレンチ」「オールドファッション」などの定番ドーナツ類に加え、「ブラックサンダー」(有楽製菓)や日本茶専門店・祇園辻利、ゴディバなどとのコラボ企画も積極的に展開している。

 そんなミスタードーナツが近年、力を入れているのがドーナツ以外の食事メニューだ。「ミスドゴハン」というカテゴリーを設け、ピザやホットドッグ、ミスド ピッツァ、飲茶、パイなどを展開。今年6月には揚げたパンに具材を挟んだ「ザクもっちドッグ」シリーズとして「ザクもっちドッグ カレー」「ザクもっちドッグ メキシカンミート」「ザクもっちドッグ タマゴ」(いずれも308円/税込/イートイン)を投入。「ミスドゴハン」にカテゴリーされるメニュー数は約20にも上る。

ミスドで飲茶系メニューを食べている一人女性客は少なくない

 そして話題になっているのが、10月2日に発売される「台湾ゴハン祭り」だ。台湾の郷土料理や定番料理をイメージした飲茶商品として「台湾風ルーロー麺」「台湾風豆乳野菜麺」「台湾風鶏サンラータン麺」(いずれも693円)のほか、「ピザッタ 台湾風ルーロー」(495円)、「台湾胡椒餅風パイ」(264円)、「台湾ごま団子風パイ」(同)を投入。非ドーナツのメニュー数はドーナツのそれに迫る多さとなる。そのため、ミスタードーナツが脱ドーナツの路線を強めるのではないか、という見方も出ているが、外食チェーン関係者はいう。

「ここ数年の新商品の展開をみても、ミスドがドーナツに力を入れていることは確かであり、手を抜くということは当面はないでしょう。基本的にミスドの主要顧客ターゲットとしては、イートインでは学生など10~20代のグループ客であり、個人では違ったニーズを持つグループ客に選ばれるためには『ドーナツもあるけど、スイーツ以外のメニューや、ちょっと小腹を満たしたいという人向けのメニューもある』というかたちで、それなりにバラエティー豊かで違った嗜好を満たすメニュー構成にしておく必要があります。そしてミスドはずっと以前からドーナツ以外のメニューを扱っており、頻繁に新商品を投入していることを見る限り、ゴハン系メニューは一定の売上をあげていると考えられます。

 このほか、女性のなかには『ささっと中華料理を食べたいけど、一人で中華料理店やラーメン店に入るのは恥ずかしい』と感じる人が一定数おり、スイーツ店であるミスドであれば一人で入店することに抵抗を感じないでしょうから、そうした層を取り込めることが期待できます。実際にミスドの店内で飲茶系メニューを食べている一人女性客の姿は結構見られます。

 一方、テイクアウトの場合、やはり人間は甘い物を食べれば、しょっぱい物も食べたくなるものなので、ドーナツを買うついでにパイやホットドッグ系のものを買うという購買行動を誘うことが期待できます。家族や職場、知人への手土産として一度にたくさんのドーナツを購入する客も多いですが、そういう客が『自分用にはドーナツ以外のものを買っていく』ということも期待できるでしょう」

コンビニの存在

 ミスタードーナツが飲茶メニュー「ミスター飲茶」を発売したのは、今から32年前の1992年のこと。一時期は「肉まん」「シューマイ」「エビ蒸し餃子」などの点心、「おかゆセット」などの軽食なども販売していた。2017年には「ミスドゴハン」とするコンセプトを展開し、本格的にメニューの多角化に踏み込んだ。ミスタードーナツを運営するダスキンによれば、飲茶の売上は2023年実績で約600万食にも上る。

「ミスドがゴハン系メニューに力を入れるようになった背景には、2014年にセブン-イレブンがレジ横でのドーナツ販売を本格的に開始したことを契機にコンビニ各社がドーナツに力を入れ始めたことがあると考えられます。結果的にセブンは17年にレジ横でのドーナツ販売をやめましたが、その間にミスドの業績は悪化し、ミスドは16~20年に店舗数を200近く減らし経営効率化を図ったり、コラボ企画をはじめユニークな期間限定商品を頻繁に投入するなど、さまざまな取り組みを行い、そうした改革の一つとしてゴハン系メニューの拡充も行われました。結果的にこうした施策が功を奏し、ここ数年の好調につながっています」(外食チェーン関係者)

価格的な優位性が必要とされない

 ミスドのゴハン系メニューの価格は安くはない。たとえば「台湾風ルーロー麺」は693円、「チーズドッグ」は440円、「たまごチャーハン」は605円、「ザクもっちドッグ カレー」は308円、「6種のチーズピッツァ(Mサイズ)」は1400円。「マクドナルド」の「チーズバーガー」が200円、「熱烈中華食堂 日高屋」の「チャーハン」が510円、同じく日高屋の「中華そば」が390円であることを考えれば、他業態チェーンと比較して価格的に優位性があるとはいいがたい。

「ミスドのドーナツの高いクオリティーに対して、ドーナツ以外のメニューのクオリティーやコスパが良いかといわれれば、ちょっと微妙かもしれません。ただ、グループのなかにドーナツを食べたい人と飲茶も食べたい人が混在しても一緒に利用できたり、一人で中華料理店には行きたくない女性客でも利用できるというメリットも存在するため、必ずしもファストフードチェーンや中華料理チェーンなどに対して価格的な優位性が必要とされないという面はあるでしょう」(外食チェーン関係者)

(文=Business Journal編集部)

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