「大阪の安売り王」として大阪では知らない人はいないとされる格安スーパーチェーン「スーパー玉出」が閉店ラッシュに見舞われているとして話題を呼んでいる。2019年には45店舗が営業していたが、この5年間で半分以下の20店舗にまで減少。今年9月だけでも5店舗が閉店しているが、同チェーンに何が起きているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
「スーパー玉出」といえば、黄色の背景に赤色文字の店名とヒマワリの絵が掲げられた外観、さまざまなデザインのネオンが光り輝く店内など、派手な店舗構成で知られる。「1」がつく日に1000円以上の買い物をすると対象商品を1品だけ1円で購入できる「1円セール」や低価格の特売品、100~300円台の総菜・弁当類などが集客の要となっている。
創業は1978年。大阪市西成区に1号店がオープンし、創業者の前田託次氏は関西では名物経営者として知られていたが、2018年に組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で逮捕され、罰金30万円の略式命令が出された。同年には「スーパー玉出」事業は、大手鶏卵会社イセ食品(22年に経営破綻)元会長が出資する不動産会社が設立した受け皿会社フライフィッシュに譲渡され、現在の運営会社は同社となっている。今年6月には、スーパー「肉のハナマサ」を運営する花正がスーパー玉出の8店舗を取得すると発表された。当該店舗の一部は「肉のハナマサ」にリニューアルされるとみられる。
「スーパー玉出はその日その日の特売品や総菜類は確かに安いが、それ以外の商品は通常の価格とそれほど変わらない。また、精肉などの生鮮品の品揃えは魅力的とはいえず、玉出で生鮮品を買うことに抵抗がある人もいる。現在ではEDLP(エブリデー・ロープライス)を掲げて多くの商品を毎日、低価格で販売し、かつ生鮮品も充実させているスーパーも多く、玉出は厳しい競争を強いられているように感じる。また、20店舗程度の規模では、仕入れ先のメーカーに対するバイイングパワーもあまり発揮できず、他の大手チェーンと比較して、より踏み込んだ低価格で納入させることも難しい」(小売チェーン関係者)
ロピアとオーケーが関西進出
そのスーパー玉出が前述のとおり閉店ラッシュとなっている。昨年には11店舗を閉店し、今年9月だけでも5店舗を閉店。背景には何があるのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。
「もともと玉出はメーカーや問屋、市場で在庫過剰になった商品や賞味期限が近付いた商品などをスポット仕入れで大量に安く調達するなどして、とにかく安さを追求する方針で成長してきました。しかし近年ではオーケーや西友、ロピアといったEDLPを掲げる大手スーパーが勢力を拡大しつつあり、システムも構築・導入するなどコストを削減し、正規ルートでメーカーから仕入れ、低価格を実現、生鮮食品も一定の品質を担保するようになりました。消費者もスーパーに対し、安さに加えて一定の品質を求めるようになり、とにかく安さだけを追求してきた、いわゆる昔ながらの安売りスーパーは消費者に選ばれにくくなってきました。今年、関東エリアを主戦場としてきたロピアとオーケーが大阪に出店して関西に進出するなど、有力な大手のディスカウントスーパーが攻勢をかけようとしていることも、大きな背景としてはあるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)