jinjer「第2の創業」で成長加速へ…AI活用で「ジンジャー」を進化

●この記事のポイント
・クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を手掛けるjinjerが、「第2の創業」を迎える
・CEO、CFO、CCOの新任者は3人ともグローバル企業での経験が豊富で、グローバルな視点を取り込んで会社の成長を加速
・「ジンジャー」へのAI活用を含めて進化を加速、UI・UXの強化やプロダクトをつなぐオートメーション機能の強化などは引き続き推進
1万8000社以上の企業が利用するクラウド型人事労務システム「ジンジャー」を手掛けるjinjerが、「第2の創業」を迎える。現代表の桑内孝志氏が退任し、後任に株式会社Zendeskで経営トップを務めた経験を持つ冨永健氏が就任。さらなる成長を目指す。現在のjinjer設立から今年で5年目を迎え成長が続く同社は、どう生まれ変わるのか。同社に取材した。
●目次
人事労務・勤怠・給与などの人事の定型業務、人事評価・人事データ分析・eラーニングなどのタレントマネジメント業務に関する製品群からなる「ジンジャー」は、業務の自動化やワークフローの統合、包括的な人事データ分析などが実現できる点が特長。月額300円/月から利用可能という価格帯も好感され、中小企業から大企業まで延べ1万8000社以上に導入されており、現在も利用企業数は右肩上がりで増加し続けている。
「ジンジャー」は、もともと人材サービスの大手ネオキャリアが新規事業として、バックオフィス業務全般の効率化をサポートするSaaSとして立ち上げたサービス。2021年10月に同社からjinjer株式会社が新会社として独立し、翌22年3月には投資会社などから51億円を調達し、大きな注目を集めた。
プロダクト群、従業員のポテンシャルを今以上に伸ばしていく
現在では450名以上の従業員を抱える規模にまで拡大した同社が「第2の創業」に挑むというが、その背景について冨永氏は次のように語る。
「昨年9月に弊社にプライベートエクイティファンドのPotentia Capital社とJ-STAR社が資本参加したことで、株主構成が変わり、新しいスタイルで経営を進めていこうと取り組んでいるところです。HRテック市場が拡大するなかで弊社が開発してきたジンジャーシリーズ、そして従業員のポテンシャルを今以上に伸ばしていけるのではないかと考え、第2の創業と銘打たせていただきました」
具体的には何が変わるのか。
「代表取締役社長 CEOとして私、冨永の他に、CFOの木村 哲哉(最高財務責任者)、CCOの廣田 達樹(最高顧客責任者)が新たに加わります。新任者は3人ともグローバル企業での経験が豊富で、外部から入ることになり、弊社の良い部分を継承しつつグローバルな視点を取り込んで、さらに会社の成長を加速させていこうと考えております。
具体的には、お客様の声をダイレクトに受けて開発の優先順位を決めたり、バグがあった場合はより早急に改修するなど、これまで以上にお客様に寄り添って製品を開発する体制を整えていきます。また、カスタマーサクセスをさらに強化して、お客様にご購入いただいたジンジャーの各機能をフルで使いこなしていただけるよう、よりきめ細やかなコミュニケーションをとらせていただくサポートも必要だと考えています。お客様にお支払いいただいた金額以上の価値を確実にお届けし、互いにメリットのあるWin-Winの関係を築いてまいります。」(同)
「ジンジャー」へのAI活用を含めて進化を加速
前述のとおり同社の主力事業は「ジンジャー」だが、全社の事業展開の方向性に変化はあるのか。
「資本面での強化については、昨年のプライベートエクイティファンドによる資本参加によってすでに対応済みであり、今後の事業展開に大きな変化はありません。これまで通り、ジンジャーの事業価値を高めていくという方向性に変わりはなく、引き続きその実現に向けて取り組んでまいります。
プロダクト面では、AIの活用を含む進化の加速に加え、UI・UXの改善や人事業務の自動化によるプロダクト間の連携強化を推進していきます。加えて、今後はこうした取り組みの先にある、ジンジャーが目指す世界観や提供価値を明確に伝えるためのブランドメッセージについても、マーケティングの観点から改めて発信していく予定です。」(同)
過去に退職した人が再入社するケースも珍しくない
IT業界が空前の人手不足に見舞われるなか、各社にとって優秀な人材の確保・育成は大きな経営課題の一つとなっている。jinjerは過去に退職した人が再入社するアルムナイ採用を経て在籍する社員が少なくないことでも知られているが、人材の確保・育成面では、どのような取り組みを行っているのか。
「弊社では新卒採用後も長く在籍する社員が多く、人間関係やカルチャーのつながりから再入社する例も珍しくありません。一度転職したものの、jinjerの成長や雰囲気の変化を耳にし、もう一度挑戦したくなったという声も多く、こうした流れが自然に生まれるのも、jinjerならではかもしれません。」(同)
競争が激化するHRテック市場のなか、「第2の創業」という挑戦で気になるのは、やはり数字的な目標値だ。同社は未上場のため業績データは非公表だが、最後に目指す数値目標を聞いた。
「数字については、今後開示可能な範囲で公開していきたいと考えています。一方で、SaaS業界では『トップ1~3位に残り続けなければ競争に追いつけなくなる』と言われるほど、競争の激しさが増しています。今後も優勝劣敗がさらに進むことが予想される中、弊社もメジャープレイヤーとしてのポジションを確保し続けるための計画を、着実に実行しています」(同)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)