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超高齢社会で「電動車いす」増加の兆し、どれを選ぶべき?意外に知らない基礎知識…自己負担1割で利用

2025.08.18 2025.08.17 13:42 企業
WHILLの公式サイトより
WHILLの公式サイトより

●この記事のポイント
・超高齢社会に突入で新たな移動手段として注目されているのが「電動車いす」
・厚生労働省がGPSを搭載した電動車いすを介護保険の給付対象に加える方針を決定
・ユーザー自身が操作できる「自操式」と、自らの操作が難しく介助者が後ろから操作する「介助式」

 団塊世代が75歳以上となり、日本はいよいよ本格的な超高齢社会に突入した。認知機能が低下した高齢運転者に免許返納を促す動きはさらに加速しそうな中、新たな移動手段として注目されているのが「電動車いす」だ。

 そもそも電動車いすは電動式のバッテリーによってモーターで動く車いすのことで、ジョイスティックやボタンで簡単に操作できるのが特徴。基本的には障害や高齢などによって歩行が困難な人の移動をサポートすることを目的としている。よく「シニアカー」と混同されがちだが、シニアカーはハンドルで操作する点が大きく違う。交通ルールはどちらも歩行者と同じ扱いで、歩道や横断歩道を通行し、歩行者用信号に従う。そしてどちらも要介護認定などの条件を満たせば介護保険制度が適用され、レンタルも可能だ。

●目次

2026年にはGPSを搭載した電動車イスを介護保険の給付対象に

 現在、介護保険の給付対象となる電動車いすはおよそ300製品。要介護度2以上の人が借りた場合に限り、介護保険の適用を受けることができる。保険適用されれば、原則1割の自己負担でレンタル利用が可能。自己負担額は所得に応じて1〜3割となり、負担額は月2,000円程度(1割の場合)からとなる。

 さらに最近は厚生労働省が全地球測位システム(GPS)を搭載した電動車イスを介護保険の給付対象に加える方針を決定したことも話題に。実はこれまでの介護保険制度では、福祉用具の本体部分と通信機能部分が物理的に分離できない場合、本体部分も含めて介護保険の給付対象とならなかったのだ。それに該当するのがまさに、GPSの搭載やリモート操作ができる車椅子。まずはGPSの搭載が認められた形だが、GPS搭載製品を借りた場合、料金は数千円程度高くなる見込みだという。

電動車いすはどんな種類がある?

 では具体的にどんな電動車いすがあるのか。まず電動車いすはユーザー自身が操作できる「自操式」と、自らの操作が難しく介助者が後ろから操作する「介助式」の2つに分かれる。さらに自操式はジョイスティックを自ら操作する「標準型」と、一般的に使用されている手押し車椅子にバッテリーとモーターを取り付けた「簡易型」に分類される。

 現在、国内の電動車いすでシェアトップなのは日進医療器。1964年に設立され、1999年には国内車椅子メーカーで初となる国際品質規格(ISO9001)に登録された老舗のメーカーとしても知られている。こちらの看板商品は6輪電動車いす「NEO-PR」。2分割にして折り畳みができるので、車への積み降ろしがスムーズな点が好評だ。ほか介助用の電動車いすでは、電動モーターで坂道や長距離も楽に移動できる「軽e(かるいー)」も有名だ。

 さらに新進気鋭の電動車いすメーカーとして注目を集めるのが、2012年に設立された「WHILL(ウィル)」。従来の電動車いすの機能性を維持しながらも、誰もが乗りたくなるデザイン性に優れていることが特徴で、全国の取扱店では気軽に試乗することも可能。多くのメディアでもたびたび取り上げられている。介護保険が適用となる「WHILL Model R」は狭い道のりでもスイスイ移動でき、その場で旋回できる小回りが特徴だ。

 ペルモビールは福祉大国・スウェーデンで1963年に創業された電動車いすメーカーで、約70カ国以上に事業を展開している。同社の人気モデル「F3 コルプス」は前輪駆動方式で室内での取り回しを助け、75mmの段差も乗り越えることが可能。立ち上がった姿勢に近い状態になり、足底から各関節などへ適切な荷重を加えることで身体への良い影響も報告されている。

 また、1989年より「ヤマハ発動機」も電動車いすの開発に着手。1995年にテスト販売を開始、翌1996年には本格的に販売をスタートさせている。そして2024年には同社で約10年ぶりとなる車いす電動化ユニット「JWG-1」を発表。ただし、こちらは完成車ではなく、後付けで手動車いすに装着することで電動車いす化することができるシステムユニットとなる。主に車いすメーカーに供給して手動車いす製品に装着することで電動化をおこない、新車として販売することを想定。電動車いすの新たな可能性を広げる形として注目を集めている。

 どれを選べばいいのかはユーザーの身体の状態にもよるので、ケアマネジャーや福祉用具の相談員、町や市など各自治体に相談するといいだろう。

 日本ではまだ高齢者の電動車いす移動は少数というイメージはあるかもしれないが、電動車いす普及協会によると2024年の出荷台数は1万9632台。これから高齢化が加速すれば、さらに増えるのは間違いないだろう。ちなみに中国では近年、気軽な移動手段として電動車いすを活用する若者も増えているというから驚きだ。日本でも今後さらに電動車いすが普及するのかが注目される。

(文=高山恵/ライター、有限会社リーゼント)