中間連結の営業利益も前年同期比2.5倍増の1507億円、最終利益は同1.5倍増の998億円だった。この営業・最終利益は国内乗用車メーカー8社中4位、営業利益率はトヨタ、ホンダを飛び越えて1位に躍り出てしまう勢いだ。
10%を超える営業利益率は国内乗車メーカーではまれであり、近年では05年3月期に10%を記録した日産だけ。財務の優等生と言われるトヨタでさえ近年は記録していない(近年の最高は04年3月期の9.6%)。
こうした収益力、財務内容、北米市場快走の「3拍子」を背景に同社は今年1月15日、14年3月期の世界販売計画を当初の80万7000台から前年同期比6%増の88万台へ上方修正した。拡大志向の強いトップによく見られる「好業績を背景に工場新設やライン増設で一気呵成に急成長ではなく、身の丈に合った成長に抑えているのが堅実な吉永社長の采配らしい」(証券関係者)と株式市場からの評価も高い。
具体的には既存設備の「ちょこっと能増(生産能力増強)」で生産台数を増やしている。これについて、吉永社長は「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/13年11月5日号)の取材に対して「ちょっと足りないぐらいがちょうど良い」と答え、「例えば新工場建設で生産能力を20万台増やしたとして、今の好業績をいつまで守れるのか、誰にもわからない。だから、ちょこっと能増で生産リスクを最小限に抑えるのがトップの務め」との趣旨の説明をしている。
吉永社長が堅実経営にこだわっているのは、個性の乏しい車の投入で2度も行った販売計画の下方修正、米GMとの業務提携解消など、経営が迷走した02-06年度中計の苦い反省からだ。吉永社長は当時、経営企画担当役員としてその中核にいただけに、成長の背伸びの危うさを身に沁みて知っているようだ。
「グローバル時代」と言われても生産拠点を安易に海外移転せず、国内の既存拠点を縦横に駆使して技術力を磨き、トヨタやホンダが及ばないオンリーワン車を開発。販売台数は最下位でも海外市場で独自の存在感を発揮する「スバルのビジネスモデル」が注目を浴びるゆえんとも言える。
(文=福井 晋/フリーライター)