日本におけるバレンタインデーの起源は諸説あるが、売り上げが落ち込む2月に菓子メーカーやデパートが仕掛けたイベントであるというのが有力である。1970年代には小学生から高校生まで幅広い年代の学生の間で浸透し、その後、国民的行事となった。
当初は女性が意中の人への「愛の告白」と共にチョコを贈るイベントであったバレンタインデーも、どうやら最近は様子が変わってきているようだ。
日本チョコレート・ココア協会の「バレンタインデーシーズン推定販売額」のデータによると、1994年まで右肩上がりでチョコレートの販売額は伸びていたが、日本経済のバブル崩壊以降、販売額はほぼ横ばいである。チョコレートメーカーは毎年のように「バレンタインデー・キャンペーン」を展開しているが、ここ20年販売額は頭打ちなのだ。
要因は2つある。一つはいわゆる“日本経済の失われた20年”と連動するように、チョコレートの販売は景気に大きく左右されるということ。もう一つが、「バレンタインデー」に対する意識が変化しているということだ。
インターネット調査会社、マクロミルが行った「バレンタイン実態調査2013」によると、09年から13年の間に、「恋人・夫」への贈る割合が10%低下、「義理チョコ」に至っては30%も低下している。逆に友だちに贈る「友チョコ」や自分自身に贈る「自分チョコ」は160%の伸びを示している。
さらに最も特筆すべきは、バレンタインデーの特徴であった「意中の人」へ贈る割合が、4年間で40%も低下していることだ。バレンタインデーは「愛の告白」から、親しい人に「チョコを贈る日」へと変化しつつあることがわかる。
あと10年もすれば、本来の意味が忘れられ、単なる「豆まきの日」となった現代の節分のような運命を辿るだろう。10年後の若者は2月14日がかつて「愛の告白」の日だったと聞いて驚くに違いない。
●今年、男性はもらえる確率高い?
とはいえ男性諸君にとっては、女性からチョコをもらえるかどうかが気になるところだろう。今年チョコがもらえるかどうかを占える一つの指標をお伝えしよう。
前出の日本チョコレート・ココア協会のデータを見ると、チョコの消費量は景気と連動していることがわかる。つまり、景気が良くなれば、女性の財布の紐も緩くなり、1人分くらいは余分にチョコを買ってくれる可能性も高いということだ。
そこでマクロミル社の調査データ「MACROMILL WEEKLY INDEX」の「使ったお金」を見てほしい。アベノミクスの成果を議論するよりも、現実に「使ったお金」(個人の消費金額)が増えたかどうかをみれば現在の景気を正確に読むことができる。
14年になり、1月から「使ったお金」が前年を上回っていることがわかるだろう。これは吉報である。今年は昨年よりも“余計に”チョコを買ってくれる可能性があるのだ。
しかし、そのチョコがあなたのところにやってくるかどうかは、「神のみぞ知る」である。
(文=鈴木領一/ビジネス・プロデューサー)