今回の人事は関係者に意外感をもって受け止められている。ローソンの親会社である三菱商事の小林健社長など現執行部が、玉塚氏の社長就任に難色を示していると伝わっていたからだ。玉塚氏の社長就任に伴い、三菱商事から代表権のある副社長として竹増貞信氏がお目付け役としてローソンに入る。竹増氏は現在、小林社長の業務秘書であり44歳と若く、「玉塚氏の次の社長候補」との見方も強い。竹増氏は、三菱商事では小島順彦社長時代に広報部報道チームのリーダーだった。05年から広報、10年4月に小林副社長秘書、同年6月に小林氏が社長に昇格するとともに社長秘書になった。
新浪氏が代表権を返上するのは「2頭体制を避けるため」と説明されている。これまでも新浪氏はローソンの広告塔として、「ローソンを中国・上海市場に上場する」「中国で1万店を展開する」といった大きな目標や取り組みをたびたび発表し、その都度話題を呼んできた。ある全国紙記者は、「講演会の講師は2つ返事で引き受けてくれるし、コメントを求めると必ず見出しになるような発言をしてくれるので、とても助かる」と打ち明ける。
2月末の国内店舗数はローソンが1万1606店、ファミリーマートが1万547店だ。現在両社が発表している計画通りに今後出店が進んだ場合、数年以内にファミマが国内店舗数でもローソンを逆転することになり、玉塚氏は新たな局面を迎える時期に経営の舵取りを担うことになる。
●経済同友会の次期代表幹事人事への影響
ローソンのトップ交代をめぐっては、別の面でも注目されていた。新浪氏は会長になることで、経済同友会の代表幹事になる要件を満たした。長谷川閑史氏が武田薬品工業社長のまま代表幹事を続けているのは異例であり、「社長業より財界活動優先だったため、会社が業績不振に陥った」との声もある。長谷川代表幹事の任期は2015年4月までであり、新しい代表幹事は早ければ11月中に内定し、12月に公表する段取りだ。
次期代表幹事の本命といわれているのが小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長である。経済財政諮問会議の民間議員だが「評論家のようなことしか言わない」(官邸筋)と評価は高くない。新浪氏は以前、財界活動に軸足を移すのかという質問に「経済と政治をつなぐ役割はすごく大事だが、私の年齢ではまだ先の話」と答えているが、新浪氏の周辺によると前向きな姿勢を示しているといい、今後の動向に注目が集まっている。
(文=編集部)