ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 西武再上場、サーベラス次の一手は?  > 3ページ目
NEW

西武の再上場で敗北のサーベラス、注目集まる次の一手は?西武関係者に広がる危惧

文=福井晋/フリーライター
【この記事のキーワード】, , ,

 その後、サーベラスTOB期間を2回も延長するなど、5月末まで約2カ月半にわたる長いTOBを展開した。この間、サーベラスは「会社の業績に損害を与え、事業を安全かつ効率的に運営する責任を怠った」などの「後藤批判文書」を証券会社や機関投資家にばらまくなどの「後藤外し」工作活動を続けた。片や西武は、サーベラス以外の主要株主からTOB反対協力を取り付ける一方、西武線沿線住民や西武ライオンズファンを中心とする約1万3000名の個人株主を味方に防戦した。

 結果はサーベラスの負けだった。目標の4%を達成できず、3.04%にとどまった。敗因は、サーベラスの「1400円なら多くの株主が飛びつくだろう」とのもくろみに反して、利で釣られた株主が予想外に少なかったことだ。特に個人株主の大半が釣られなかった。彼らは株価にあまり興味を示さない「西武ファン」であり、したがって固定株主だったからだ。

 それでもサーベラスの持ち株比率はTOBで32.44%から35.48%に増加、株主総会で特別決議の拒否権を行使できるようになった。13年6月の株主総会に対する市場関係者の関心は、いやが上にも高まった。

 6月25日に開催された株主総会に、サーベラスが選任提案をした取締役候補には、五味氏のほかに同社顧問で元米副大統領のダン・クエール氏が含まれていた。著名2人を揃えたことで、サーベラスの「後藤外し」は成功するはずだった。しかし、ここでも同社の思惑は外れ、同社提案の取締役候補は全員否認された。翌日、サーベラスは「問題意識から目を逸らし、真摯な討議がなされなかった」と総会批判声明を発表するしかなかった。

●注目集めるサーベラスの次の一手

 その後も水面下で西武とサーベラスの応酬が続いたが、結局、サーベラスは西武の意見に同意せざるを得ず、再上場が実現した。

 再上場が実現した今、証券アナリストは「市場関係者の注目は西武の成長戦略よりも、出口戦略に失敗したサーベラスの次の一手」という。

 西武関係者は「ロックアップ期間【編註:株式公開後、保有する投資物・債券を売却できない期間】が切れる今年10月20日以降、サーベラスが出口戦略を発動するのは疑いがない。問題はその方法だ。市場で持ち株を売却しようとすれば、株価を見ながらになるので、発動終了まで何年かかるかわからない。そのため、市場外で売却する可能性が高い。その売却先が悪意の投資家だと再び騒動が起き、当社の成長戦略が阻害される」と心配する。

 一方、証券アナリストは「サーベラスは、鉄道、不動産開発、リゾートなど西武と同業への持ち株売却を狙っている可能性が高い。同業であれば自社との相乗効果を見込めるので、それを説得材料にサーベラスが目標としている1株2000円での売却もできるだろう。ほかにも、米投資会社なども当然狙っているだろう」と指摘する。続けて「もう1つの可能性は、このまま筆頭株主として居座り続け、金と時間のかかる不動産開発より土地売却を要求してくる『焦土戦術』だ。ある意味、こちらのほうが西武にとっては恐ろしい」と顔を曇らせる。

 後藤社長の「裏の成長戦略」には、今や西武にとって獅子身中の虫といえるサーベラスに対し、どんな策が入っているのだろうか。
(文=福井晋/フリーライター)

西武の再上場で敗北のサーベラス、注目集まる次の一手は?西武関係者に広がる危惧のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!