携帯電話向けゲームを主力とするDeNAが遺伝子解析とは意外な印象を受けるが、発表会見で創業者の南場智子取締役は「遺伝子解析ビジネスにネットを組み合わせることで、新しい付加価値を生み出せる」と語った。解析の依頼をネット経由で受け付け、利用者は簡単に自分の遺伝子を調べることができる。これまで培ったネットユーザーの動向調査などのノウハウが生かせるとみているようだ。
解析は新しく設立する子会社であるDeNAライフサイエンスが行う。利用者は送られてきた検査キットで、口の中の粘膜などを採取して返送。解析データでは自分が将来かかりやすい病気などがわかり、病気の予防などに使える。早期の黒字化を目指し、マーケットは“兆円単位”の市場に育つ可能性があるとDeNAはみている。
●市場の関心集まる「3度目の成功」
SNSゲームの会社という印象の強いDeNAだが、創業から株式を上場するまでのビジネスはパソコンを使ったネットオークションだった。1999年3月設立の同社は、同年11月にネットオークションサイト「ビッダーズ」を開始。携帯電話の普及に伴い、2004年には携帯電話向けオークションサイト「モバオク」をスタートさせている。この間、PC、携帯電話のショッピングサイトにも進出している。その後、業績の拡大を受けて05年2月に東証マザーズ市場に新規上場を果たした。
そして06年2月、同社を一躍有名にした携帯電話向けゲームサイト「モバゲータウン(モバゲー)」が始まる。テレビCMなどで知名度も急上昇し、07年には東証1部市場に上場。08年4月にはモバゲーの会員数が1000万人を突破するなど快進撃を続け、ゲームが主力事業に育っていくのである。特にソーシャルゲームの「怪盗ロワイヤル」などがヒットした。当時社長だった南場氏は夫の介護などのため、11年に社長職を退いている。
12年にはSNSゲームの課金方式のひとつであるコンプリートガチャが問題となり、消費者庁が4月に「景品表示法(不当景品類および不当表示防止法)」において問題があるとの見方を示し、需要がしぼんでいく。その後は「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)に代表されるスマートフォンからアプリをダウンロードするタイプのゲームが流行し、DeNAの業績も低迷気味となる。
同社の株価は02年の上場から11年2月にかけて5.7倍と急騰したが、現在ではピークから3分の1程度にまで急落している。直近では、コンプガチャ問題に揺れた12年の安値を下回る場面もあった。
そうした中での遺伝子解析サービスへの参入。しかも、創業者の南場氏が発表の表舞台に立った。ネットオークション、SNSゲームで2度の飛躍を遂げたDeNAが、3度目の成功を導けるかに市場の関心が高まりつつある。ただ、個人向け遺伝子解析サービスについては、ヤフーをはじめすでに複数社が参入しており、DeNAは厳しい競争を強いられることになる。
(文=和島英樹/日経ラジオ記者)