設立総会には、すでに新幹線のシステムを採用している台湾をはじめ、米国、豪州、英国、インド、シンガポール、マレーシアの各国・地域の代表も顔を揃えた。協会の顧問には元駐日米大使のトーマス・シーファー氏ら米政界に影響力のある有力者が就任した。リニアの米国売り込みを成功させるために、米政界に顔が広い大物たちを揃えた。
協会設立の中心人物であるJR東海の葛西敬之名誉会長は、初会合後の記者会見で、「東海道新幹線は、開業から50年間かけて磨き上げてきた。世界が共有できる財産としていきたい」と語った。
●暗雲立ち込める新興国への輸出
これまで新幹線輸出に先行してきたのが、JR東日本だった。だが、日本政府とJR東日本が目指す新興国向けの新幹線の輸出には、黄信号がともっている。入札が最も近いとみられていたタイでクーデターが発生。ブラジルやベトナムでも計画は凍結されている。タイのインラック前首相は、バンコク市を中心に総距離1450kmの高速鉄道網を整備する計画を打ち出した。総事業費は2兆5000億円。JR東日本はJR九州、三井物産や三菱重工業と企業連合を組み、九州新幹線モデルの売り込みを図っていたが、タイの軍部クーデターでインラック首相が失脚。入札がいつ行われるかわからない。ブラジルでは福祉の充実や安価な住宅供給を求める大規模な反政府デモが起き、1兆6000億円の高速鉄道計画は見送られた。ベトナムでは5兆円規模の高速道路計画が国会の反対で凍結。インドでは政権交代が起き、1兆円規模の高速鉄道計画がそのまま進むかどうか不透明になった。
JR東日本が推進してきた新興国への新幹線輸出は暗礁に乗り上げ、頼みの綱はJR東海の米国プロジェクトのみとなり、安倍首相のブレーンである葛西氏が名誉会長を務めるJR東海のリニア輸出は、国家プロジェクトに格上げされた。果たして政府の強力な支援の下で進められる米国輸出は成功するのか、その成否は、将来の日本のリニア輸出拡大を占うことになる。
(文=編集部)