今回は、サッカーに明るくない人でも世界最大のスポーツの祭典を楽しめるように、数字から見るW杯の魅力を紹介したい。
●肥大化するサッカービジネス
近年の欧州サッカーでは、異常なまでに高騰した移籍金が問題視される機会は少なくない。昨夏、レアル・マドリード(スペイン)にトッテナム(イングランド)から加入したギャレス・ベイルの移籍金は9100万ユーロ(約121億円)にも上るなど、中東からのオイルマネー、ロシアの石油王、新興国の実業家らのマネーがサッカー界に入り乱れ、日々天文学的な金額で選手が移籍している。
アメリカの「Forbes」誌によれば、現役選手の年収ランキングはスポンサー収入を含めれば1位のクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)が7300万ドル(約74億2000万円)、2位はリオネル・メッシ(FCバルセロナ、スペイン)の6500万ドル(約66億1000万円)。1位のロナウドの年俸は、今年度の日本プロ野球の人気2球団、読売ジャイアンツと阪神タイガースの全選手の総年俸(約78億円)と遜色ない数字となる。さらに、3位のズラタン・イブラヒモヴィッチ(パリ・サンジェルマンFC、フランス)の年俸3400万ドル(約35億6000万円)を加えた3人分で、プロ野球のセ・リーグ6球団の総年俸(約170億円)を上回る計算になる。
●世界最大規模の賞金
サッカー選手の年俸は増加の一途をたどっている中、最も試合の放送権料が高く、その恩恵を最も受けているのがイングランド・プレミアリーグだ。今回のW杯にも、全参加選手736人中、114名をプレミアリーグ所属選手が占め、この数字は2位のイタリアのセリエAの81人を大きく引き離している。
プレミアリーグ創設時の1992年の放送権料の総額は約483億円に対して、現在は約8000億円を超える。リーグ創設前年の91年、選手たちの平均年俸は約958万円だったが、現在は30倍以上にも膨れ上がっている。
英紙「Daily Mail」によれば、イングランドのプロサッカー選手の平均給与(週給)は約358万円(データはプレミアリーグ所属選手限定、2011年時点)。この数字は、平均約2200万円といわれる日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)所属選手の平均年俸の約8倍だ。
今回のW杯の賞金総額は5億7600万ドル(約586億4000万円)。昨年開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の賞金総額が1500万ドル(約15億3000万円)だったことと比較すれば、W杯がスポーツイベントとしていかに突出したものかを示す指標となるだろう。賞金面だけで判断すれば、W杯と同規模のスポーツイベントはサッカーのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)と欧州選手権のみとなる。CLやW杯などの国際的なサッカー大会の価値は年々上昇しており、10年開催のW杯南アフリカ大会に比べ、ブラジル大会の総賞金は40%近く増額となっている。