フジHDは2014年3月期決算で、連結最終利益である当期純利益が44.8%減の172億円と大幅な減益。視聴率競争でも苦戦中であり、在京キー局5社のうちで「ひとり負け」の状況だ。
今年の株主総会の注目点は、個人株主2人が共同で提出した10個の株主提案だ。少数の個人株主の訴えが株主総会で注目されるのは異例であり、大手メディアでは初めてとみられる。株主総会では結果的に提案はすべて否決されたものの、その内容は現在のフジHDに一石を投じるものとなった。
株主提案の目玉は「取締役・監査役の75歳定年制導入」だ。フジHDの取締役は16人いるが、このうち、75歳を越えているのは日枝久会長(76)や産経新聞の清原武彦会長(76)など5人おり、1人は80代だ。監査役も5人のうち4人が75歳を越えている。若手の感性を大胆に取り入れて視聴率競争に勝ち抜くことが至上命題との指摘もある中で、現在のような長老支配ではその弊害も大きいといえよう。
昨年の株主総会でフジHDは、同社とフジテレビの経営陣を分離することが発表され、同局の黄金時代を築いた名物プロデューサー・亀山千広氏が社長に就任した。しかし、今期の業績を見る限り、その効果はほとんど出ていないようだ。社長が交代する一方で日枝会長だけは引き続き両社の会長に留任。日枝氏は1988年にフジテレビ社長に就任して以来、実に26年もの長きにわたってトップの座に就いている。同局周辺からは、「日枝氏が退任すれば亀山氏や常務の大多亮氏らが思う存分、視聴率回復に向けた改革に取り組めるのではないか」との声も聞かれる。
●株主から経営陣への批判も
株主総会では、業績報告に続いて、株主からの質疑に移り、いくつか興味深い質問が上がった。
まず、産経新聞には宗教団体、幸福の科学の広告が多すぎるという指摘だ。産経新聞が発行する夕刊フジには連載まであるという。これに対し、フジHDの太田英昭社長の回答は「現場の判断」だった。しかし、これを素直に受け止める株主は少なく、「本当の理由は、宗教法人からの広告出稿に頼らざるをえないほど、産経はお金に困っている。経営的にも厳しく、フジHDは一時、産経を売却しようとしていたほど」(マスコミ業界関係者)という背景があるようだ。
質疑では、他の株主から「これだけ業績の悪いフジHDでも株価が極端に落ちない理由は、お台場カジノ構想への漠然とした期待感ではないか」と指摘。これに対しフジHD側は、「特区準備室」を「特区事業室」に格上げして力を入れていることを認めた。
さらに別の株主からは、日枝氏と安倍晋三首相が頻繁に食事やゴルフなどを重ねるほど親密な点についても批判の声が上がった。
株主総会は結局、視聴率と業績回復を期待できるようなめぼしいプランが提示されることなく終了。一部では日枝会長の退任も噂されていたが、続投が確認され、経営刷新が行われることもなかった。毎年のように他局と年間視聴率トップ争いをしていた往年のフジ復活への道は遠い。
(文=編集部)