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平安女学院大学、倒産寸前から再生で就職率100%達成 “大学のゴーン”が狙う次の一手

井上久男/ジャーナリスト
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山岡 私学は経営陣と教職員が一体となって自助努力をして経営の安定化を図ることが大前提であるという考えに、変わりはありません。しかし最近の流れを見ていると、資金力が豊富なマンモス大学しか生き残れないような政策にあまりにも傾いており、率直に申し上げて、小規模大学を潰しにきていると感じます。個々の経営努力の範疇を超える課題だと感じており、果たして日本の大学教育の在り方はこれでいいのかという問題意識がありますので、活動していきたいと思っています。

 私が感じている問題点をいくつか挙げましょう。マンモス大学は、複数学部を受験させることで、受験料収入が数十億円に上ります。その収入を使って新聞、雑誌、テレビなどのメディアに広告宣伝を打ち、学部を増やして学生をかき集めていますので、さらに受験料収入が上がります。小規模大学はそうした分野に資金を投入できないのが実情です。競争は大切ですが、実態は健全な競争ではなく、金さえあれば学生が集められるシステムになっていることに疑問を感じます。

 文部科学省の各種審議会などのメンバーには、こうしたマンモス大学の教員や理事が就くので、小規模大学の実情が教育行政に伝わりにくくなっています。また、補助金政策も変わり、大学の教育などの特色を判断して交付される特別補助金が大きく減額され、その代わりに教員数・職員数・学生数に応じて配分される一般補助金が増えています。補助金の使用について大学側の裁量を広げていく狙いでしょうが、これだとマンモス大学がさらに有利になり、特色ある教育をしている小規模大学は完全に不利です。日本高等教育評価機構(JIHEE)という公益財団法人が大学のカリキュラムなどを審査していますが、その審査でもお茶やお花などの特色ある講義は評価の対象になっていないこともおかしいと思います。

 前述しましたように資金力不足から学生獲得競争に負け、定員割れを起こすと、補助金を削減する動きも強化されています。一見、もっともらしい補助金政策に見えて、資金力の強いマンモス大学しか生き残れない政策を加速させているとしか私には映りません。産業界では、中小企業庁などが置かれ、大店法や中小企業分野調整法等があり、中小零細企業に対して保護・支援の政策的な配慮がなされていますが、大学にはそのような措置が取られていないことに疑問を感じます。

 繰り返しますが、私学は自助努力が重要です。しかし、その自助努力を支援するのではなく、邪魔するような政策を国がしているのではないかと思う時さえあります。このままだと、街の八百屋さんや魚屋さんが廃業して、大手スーパーやコンビニエンスストアだけしか生き残れなくなったのと同様に、大学業界もマンモス大学だけになってしまいます。

――「小規模大学連盟」は、今後どのような活動をしていきますか?

山岡 巨額の宣伝広告費をバックにマンモス大学は学部を新設して定員を増大させていますが、その抑制を求めていきたいと思います。大規模大学の新学部設置については、大店法規制のように小規模大学の意見聴取を行う制度の設置なども提唱したい。また、マンモス大学の宣伝広告費の財源は受験料収入だけではなく、一部補助金も充当されています。税金を使ってマンモス大学が学生集めをしているわけであって、ここは国民の批判の対象になるでしょう。広告宣伝費の自主規制制度の設置も呼びかけたい。定員割れとなれば補助金を削減する傾斜配分政策も見直してもらい、経営努力をしながら特色ある教育をしている大学は、定員割れでも補助金を継続してもらうことも訴えていきたいです。
(文=井上久男/ジャーナリスト)

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