●広がる社外取締役の導入
東証1部上場企業で社外取締役を導入している企業の比率は74.2%(1345社)と、過去最高に達した(6月16日現在)。13年8月時点の62.3%(1092社)に比べ、11.9ポイント(253社)増えた。社外取締役の導入を義務付ける会社法改正案の審議が政府で進行中のため、成立を見越して導入に動く企業が増えた。さらに昨年、米国の大手議決権行使助言会社が「社外取締役が1人もいない場合、経営トップの役員選任決議に反対する」よう機関投資家にアドバイスしたことが大きかった。外国人の持ち株比率が高い企業では、トップの賛成票の比率の低下を懸念し、急遽、社外取締役を置くようにした。
キヤノン(12月決算会社)は昨年3月に開いた総会で御手洗冨士夫会長兼社長の選任議案の賛成率は72.2%と、高収益企業のトップとしては異例の低さとなった。これを受けキヤノンは今年3月の総会で、初めて社外取締役を選任した。その結果、御手洗氏の賛成票は90.1%に回復した。
新日鐵住金も、初めて社外取締役を置いた。昨年の総会では宗岡正二会長に対する賛成票の割合は78.12%。合併前の新日鐵の総会より10%強も低下したが、今年の総会は79.48%と若干回復した。新社長に就いた進藤孝生氏の賛成率は80.69%。前社長で副会長になった友野宏氏は88.32%。他の取締役は、ほとんど90%以上の賛成があった。新日鐵の経営3トップに投資家が向ける視線は厳しい。
社外取締役を置いていないコンビニチェーンのファミリーマートが5月に開いた総会(2月決算)では、上田準二会長の賛成票率は75.27%、中山勇社長は76.82%。他の取締役の賛成の割合は、全員97%を超えている。社外取締役を置かないため、議決権行使助言会社の標的になったとの見方もある。
こうした動きを受け、来年に向けて社外取締役を導入する企業は、さらに広がるとみられている。
(文=編集部)