産業用ロボットは多関節ロボットと電子部品実装機に大別される。多関節ロボットはファナックと安川電機、ABB(スイス)、KUKA(ドイツ)が世界の4強だ。ファナックは溶接ロボットなど自動車向け多関節ロボットが主力。安川電機は液晶搬送用ロボット、医療用ロボットなどを開発。電子部品の実装機はパナソニックが大手で、同社は車いす付き介護ベッドを手掛ける。
●主戦場は生活支援ロボット
これからのロボットビジネスの主戦場となるのは、生活支援ロボットである。第一ラウンドは医療・介護用の支援ロボットだ。ホンダは「ASIMO」の技術を使い、介護を想定した歩行アシストロボを開発中だ。
05年の愛知万博を機に、トヨタ自動車もロボット開発を本格化した。寝たきりの人の移動を介助するロボットや家庭内で使うロボットなどを今後、実用化する。
大手企業が積極的にロボット事業に取り組む中、ベンチャー企業の動きも活発だ。14年3月26日、医療や介護などの分野での活用が期待されているロボットスーツ「HAL」を開発した大学発ベンチャー企業、CYBERDYNE(サイバーダイン)が東証マザーズに上場した。医療・福祉用ロボットメーカーの株式上場は日本では初めてだ。
サイバーダインのCEO(最高経営責任者)は山海嘉之・筑波大学大学院教授。山海は04年、ロボット工学の研究成果を活用することを目的にサイバーダインを設立し、治療に使う世界初のサイボーグ型ロボットであるHALを開発。HALは国際安全規格の認証を取得し、欧州で医療機器として認定されるなど本格的な市場展開への準備を進めてきた。日本では400体以上、欧州でも50体がすでに利用されている。同社は富士重工業から事業を引き継いだ清掃・搬送ロボの改良型を発表する。
医療・介護分野のロボット販売の隠れた大手が、大和ハウス工業だ。ロボット事業に進出するため、07年にサイバーダインへ出資した(持ち株比率は23.9%)。同社の上場後、出資分を回収するため持ち株の一部を売却したことで出資比率は19.9%に低下したが、第2位の大株主であることには変わりはない。大和ハウスはHALなどを、これまでに全国の医療・介護施設に販売してきた。
●政府の成長戦略も後押し
安倍政権は成長戦略の柱の一つとして、ロボットを世界に先駆けて普及させることを目指して「ロボット戦略」を打ち出し、以下の4分野を集中的に支援するとしている。
(1)介護(介護職員の負担を軽くするパワーアシストスーツ)
(2)農業(無人で農作業するトラクター)
(3)インフラ(災害現場で情報を集めるロボット)
(4)工場(複雑な工程も担えるヒト型ロボット)
これら4分野のロボットの市場規模を、12年の7000億円から20年には3倍超の2兆4000億円に拡大する方針だ。
ベンチャー企業に加え、続々と異業種からの参入が相次ぎ、盛り上がるロボットビジネスが、果たして日本製造業復活の切り札になるか。今後の動向に注目が集まっている。
(文=編集部)