スカイマークは国際線の参入を目指し2011年、エアバスとの間で「A380」6機を総額1915億円(現在価格)で購入する契約を結び、14年10月から19年12月まで順次受け取る予定だった。だが、円安で購入価格の負担が増したことやLCC(格安航空会社)との競争激化による業績悪化から、6機のうち2機の購入時期を先延ばし、4機を解約する案をエアバスに打診、今年4月から協議を続けてきた。
エアバスは契約を変更する条件として、スカイマークが大手航空会社の傘下に入ることを求めた。だが、スカイマークが要求を拒否したため、エアバスから契約解除を通告され、700億円の違約金の支払いを求められた。最終的に6機全機の購入を断念し、前払い金である250億円が「(スカイマークに)戻る可能性はかなり薄い」(西久保愼一社長)という。さらに、エアバスが求める違約金が700億円規模に上るため、経営がさらに悪化する懸念が強まっている。
スカイマークの4~6月期決算の売上高は前年同期比1.5%減の181億円、純損益は57億円の赤字だった。15年3月期の通期見通しの売上高は前期比21.5%増の1044億円を据え置いたが、「(契約解除の)業績への影響は見積もることが困難」として、3億5400万円の黒字(14年3月期は18億円の赤字)としていた純利益の見通しを「未定」とした。数百億円規模の赤字になる可能性があるとみられている。
「円安によるコスト高を読み切れなかった経営の甘さがあった」と西久保社長は述べたが、航空業界内ではスカイマークの突然の失速を、驚きをもって受け止める向きは少ない。同社の独自経営は、いずれ行き詰まるとみられていたからだ。
●以前より、安全面・公共面で批判も
西久保愼一氏は1978年に神戸大学工学部化学工学科を卒業して大同塗料に入社。その後、さまざまなネットビジネスを手掛け、96年12月にインターネット接続業に進出した。ネットバブルの追い風を受けて2000年6月にナスダック・ジャパン(のちの大証ヘラクレス、現・東証)にネット接続会社、ゼロの株式を公開した。上場した際、持ち株の一部を売却し、約90億円の現金を手にした。これがスカイマーク買収の軍資金となった。
04年1月、西久保氏はスカイマークの社長に就任し、05年6月の株主総会で創業者の澤田秀雄氏が退任してからは会長も兼任した。発行済み株式の47.3%を保有する西久保氏は、名実ともにスカイマークのオーナー経営者になった。
スカイマークの経営姿勢に対しては以前から、安全性や公共性よりも株式の時価総額(株価×発行株式数)を重視しているとの批判も寄せられていた。赤字を理由に、開設している路線から突如撤退することもあり、公共性を無視しているとの指摘もあった。