06年4月11日には、整備士不足によって整備ミスが相次いだことを受けて、衆院国土交通委員会は西久保氏を参考人招致して安全体制などを質疑した。この時の西久保氏は、「経営を引き受けた時、累積債務は100億円を超えていたが、いまではスカイマークの時価総額は330億円」と胸を張ったが、議員が「時価総額がいくらだろうが、乗っている側には関係ない」と反論される一幕もあった。
そんな航空界の異端児である西久保氏は10年12月、悲願の国際線への進出計画を発表した。11年春にはエアバスと世界最大の旅客機「A380」を6機購入する契約を締結。さらに9機を追加購入して、15機体制で世界の11都市と日本を結ぶ壮大な青写真を示した。A380は1機280億円(当時の発表数字)。国際線進出のために日本航空を退職したパイロット、客室乗務員など470人を大量採用するとした。
スカイマークはA380に関して機材を一度リース会社へ売却後、ただちにリース契約を結んで使用する「セール&リースバック」方式とすることを検討していたが、リスクが大きすぎるとしてこのスキームに応じるリース会社はなく、スカイマークが自ら取得した。
●くすぶる買収観測
スカイマークは無借金経営を誇っているが、大手商社関係者は「スカイマークにカネを出すところはないだろう」といい、裏を返せば同社に融資する銀行がどこにもなかったという見方もある。
資金繰りのための新たな銀行融資が見込めない中、早くも業界内での関心は、どこがスカイマークの買収に名乗りを上げるかという点に集まっている。スカイマークの資産は、羽田空港に36の発着枠を持っていることだ。羽田空港の国内線は1枠で年間20億円の売り上げがある。スカイマークを傘下に収めれば、それだけで年間720億円の営業収入が期待できるわけだ。エアバスの違約金700億円を負担することになるとM&A(合併・買収)には1000億円程度の資金が必要だ。それでも羽田空港の発着枠が手に入れば数年で元が取れる。
日本航空(JAL)は会社更生法による経営再建が終結して、やっと立ち直ったばかり。全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスは国内線から国際線に軸足を移しており、国際線を持たないスカイマークを巨額の負債を抱えたまま買収するメリットは低い。
買収する可能性があるとするならば、今年エアアジア・ジャパンを設立したマレーシアのLCC、エアアジアグループだ。楽天と共同で日本市場へ再参入するエアアジアは、中部国際空港を拠点として15年6月に日本国内での就航を目指している。将来的には羽田空港での発着枠獲得に意欲を燃やしており、スカイマークの買収に手を挙げる公算が最も高いとみられている。
(文=編集部)