両社に共通するのは、高品質、低価格を提供するために、トータル的なマネジメントを行っている点だろう。これまでの飲食店は売り上げを上げるために、食材の原価、人のコストを抑えて、お店の雰囲気やサービスを向上させる努力を行ってきた。しかし、両社は高品質と低価格を両立するために、質(Quality)、コスト・お金(Cost)、デリバリー・時間(Delivery)、環境(Environment)をコントロールしている。
ビジネスを行う際には、QCDEのバランスを考えることが重要だといわれている。両社は、多少の違いはあるが、基本的にクオリティを上げるためにオペレーションコスト(入荷検品・値段付け・商品陳列・商品補充・レジ作業などの店舗経営に関わるコスト)や店内環境を犠牲にしているといえる。店内は狭く、顧客は落ち着いて食事をすることができない代わりに、高品質の料理を低価格で食べることができる。そして、そこに価値を感じる顧客はリピーターとなっている。顧客ターゲットを絞っていることも重要な戦略の一つといえる。
もちろん、QCDEすべてを向上させることが理想だが、QCDEは常にトレードオフ(相反)の関係である。自社のサービスでは顧客に何を提供したいのか、といった戦略を明確に持ち、その方針をブレさせずに実行することで、高い顧客満足を得られるとともに、結果、自社のビジネスも成功するのだ。ビジネスを検討する際は、つい目先のお金に目が行きがちになる。売り上げや利益を上げるために、コストを抑えることが必要となり、原価低減やリストラが行われることになる。しかし、目先のコストだけでなく、トータルリソースコストをコントロールすることが重要なのだ。
(文=岡田和典/経営コンサルタント・大学院客員教授)
※本稿は、岡田和典氏のメルマガ「最新事例に学ぶ事業価値創造のキーファクター – 岡田流ビジネスマインド養成講座 -」から抜粋したコンテンツです。
【筆者プロフィール】●岡田 和典:三菱商事、外資系コンサルティングを経て1998年プライスウォーターハウスクーパースコンサルティング入社。消費財メーカー、卸売企業、小売業において、営業、物流、間接部門の業務改革に従事し、個々の企業にとどまらず、サプライチェーン企業間の変革、戦略立案等に数多くの実績を残す。現在、岡田ビジネスディベロップメンツ代表取締役としてさまざまなプロジェクトや新規事業に参画。また複数の企業経営を代表として行う。金沢工業大学大学院にて「コンサルティング実践特論」の客員教授として教鞭をとる。
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