会社の公式説明では、デニム(DENIM)のアルファベットを並べ替えるなどした造語だとしている。しかし、これは1983年にEDWINが国内ジーンズ売り上げ第1位になった後に、日本製のイメージを払拭するために作られた公式見解で、「江戸勝」が語源と信じる向きは少なくない。
実は今、ジーンズ業界は出口が見えない苦境に立たされている。日本ジーンズ協議会がまとめた11年(暦年)の生産統計によると、ボトムス(ズボン・スカート)生産総数は4711万本で、10年を200万本弱(前年比2.6%増)上回り、6年ぶりにプラス成長となった。
プラスになった最大の要因はチノパンや成人女子、子供向けのショートパンツ、スカート類が増えたことによる。ジーンズの代名詞であるブルージーンズが復調したわけではない。ブルージーンズは子供物が9.8%増えたものの成人女子は6.5%減、成人男子にいたっては11.1%減と2ケタの落ち込みだ。
98年に7614万本あったボトムスの生産は除々に減少。11年は増えたとはいえ、ブルージーンズの生産は2258万本でボトムス全体の5割弱にとどまる。
では、ジーンズ人気が衰えたのかというとそうではない。40~50代にジーンズは順調に売れている。生産統計上、大幅に減少になっている理由ははっきりしている。年間数百万本のジーンズを販売すると言われている、ユニクロなどの大手SPA(製造小売)チェーンが日本ジーンズ協議会に加盟していないからだ。生産統計にカウントされていないのである。
カジュアル衣料専門店、ユニクロを展開するファーストリテイリングは09年3月、グループ内の低価格店、ジーユーから990円の激安ジーンズを売り出した。ユニクロのジーンズの通常価格は3990円。「ケタ違いの安さ」をキャッチフレーズにした。これに対抗して、セブン&アイ・ホールディングスやイオンなど大手スーパー各社も1000円を切る激安ジーンズを相次いで投入した。
専業メーカーはコスト面で対抗できず敗退した。和製ジーンズの草分けであるボブソンは11年5月、民事再生法を申請したが、再建のメドが立たず今年6月、破産手続きの開始決定を受けた。
価格破壊の直撃を受けたジーンズ専門店は激減。売り先が減少したため専業メーカーは減産に追い込まれた。専業メーカーと専門店はユニクロに完敗したのである。
いまや日本で、売上高100億円以上のジーンズ専業メーカーはエドウインだけとなった。そのエドウインが投資の失敗で200億円以上の大穴をあけ、経営危機に陥った。弱り目に祟り目とは、このことである。
(文=編集部)